受験者の若返りを掲げる新制度。大学院在籍中の受験が可能になるため、研究活動を阻害するとの指摘が根強い。一方、一級建築士資格が取得できることを売りに学生を集めたい大学にとっては追い風になる。

 「建築士法は教育に関係が深いにもかかわらず、我々に特段の相談もなく拙速に改正してしまった」。こう批判するのは、日本建築学会の古谷誠章前会長だ。

 日本建築学会が危惧しているのは、大学卒業後すぐに一級建築士試験を受験できるようにしたことが、教育にもたらす影響だ。全国建築系大学教育連絡協議会が2019年8月に実施した調査では、約9割の大学が教育に影響があると回答し、このうち半数以上が悪影響を懸念していることが明らかになった〔図1〕。

〔図1〕研究や教育への影響を懸念する日本建築学会
写真は、2019年2月4日に開かれた建築士法改正などに関するシンポジウムの様子。図は、全国建築系大学教育連絡協議会によるアンケートの結果。46の大学から47の回答があり、教育への悪影響を懸念する声が多く上がった(写真:日経アーキテクチュア、資料:日本建築学会の資料に日経アーキテクチュアが加筆)
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 大学院生が一級建築士試験の合格を目指して受験勉強にのめり込めば、ただでさえ就職活動に奪われがちな大学院での研究時間が大幅に減る恐れがあるからだ〔図2〕。修士1年の間は、ほとんど研究に身が入らなくなる事態も起こり得る。

〔図2〕大学院生の研究生活、起こりうるパターン
新制度の下では、大学院在学中に一級建築士試験を受験できるため、修士課程1年の前期で試験勉強、後期で就職活動に取り組む学生が現れるかもしれない(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 仮に新卒採用試験で学生が一級建築士試験に合格していることを重視する企業が増えれば、採用活動が始まる前に受験し、合格しておいた方が得策と考えるのが自然だ。

 現時点で、20年に一級建築士試験を受験しようと考えている学生の数は不透明だ。新制度に対する学生の反応は鈍いとみる大学教員がいる一方で、最近の学生は「真面目」で「資格取得に熱心」なので、在学中に一級建築士試験の合格を目指す人は一定数いるとの見方もある。

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