東京や横浜で、耐火木造による高層建築の計画が相次いで立ち上がっている。純木造、鉄骨造とのハイブリッドなど選択肢は1つではない。純木造で他の構造と同様のスパンを実現するには、柱や梁の接合部が鍵となる。

銀座8丁目開発計画(仮称)

 不動産賃貸を主な事業とするヒューリックは、東京・銀座8丁目の銀座通り(中央通り)沿いで、地上12階建ての耐火木造ビル「銀座8丁目開発計画(仮称)」を進めている。着工は2020年の初頭、完成は21年秋ごろの予定だ。高さ約56mの商業テナントビルを建設する。

 耐火木造で12階建ての商業施設は日本初。設計・施工を竹中工務店、デザイン監修を隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)が担う。隈研吾氏は、樹木の枝が重なり合うような外観について、「銀座に森が出現したイメージだ」と説明する〔図1〕。

〔図1〕銀座に森が出現したイメージの外観
「銀座8丁目開発計画(仮称)」の完成予想パース。隈研吾氏は、樹木の枝が重なり合うイメージでファサードをデザインした(資料:隈研吾建築都市設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 ヒューリックが耐火木造に取り組むのは、初めて。同社常務執行役員で開発推進部長の浦谷健史氏は、「CSR(企業の社会的責任)として環境への配慮を重視した」と言う。

内部は構造部材を現しに

 建物は、間口約9mに対して高さが約56m。平面も、間口が1スパンなのに対して、奥行きは5スパンと細長い。事業として成立させることが求められる中、施工費も踏まえて考え出されたのが、木造と鉄骨(S)造のハイブリッド構造だ。

 平面上、真ん中の2スパン分をS造とし、銀座通り側の2スパン分、裏手の1スパン分を木造にして挟み込む。柱と梁には竹中工務店が開発した耐火集成材「燃エンウッド」を用いる。床はCLTの上に鉄筋コンクリート(RC)を打つ合成床版だ。9階から上は1時間耐火構造、それより下は2時間耐火構造とする。

 「燃エンウッドなどの実績を評価して竹中工務店に依頼した。銀座のペンシルビルを、ハイブリッド構造によって経済性や機能性も踏まえながら木造にできた」(浦谷部長)

 今のところ施工費は、同規模の一般的なビルより2割ほど高くなる見込みだ。これから国の補助金を受けることも検討している。浦谷部長は、「エンドユーザーに対しては、木造建築の話題性による集客効果も期待できる。ひいてはテナントの誘致につながると考えている」と言う。

 商業ビルとして、テナントが入居する。室内は天井のCLTや柱・梁が木の現しとなる〔図2〕。「内装に手を加えずに、ほぼそのままで使うこともできる。テナント工事を軽減する効果もあるとみている」(浦谷部長)

〔図2〕天井や柱、梁を木の現しに
室内から銀座通り側を見たイメージ。床スラブの天井側にはCLTを、柱と梁には耐火集成材を用いて木を現しとする(資料:隈研吾建築都市設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 発注者の声 
浦谷 健史 ヒューリック常務執行役員 開発推進部長
都市部の事業用ビルで木材活用を

(写真:日経アーキテクチュア)

 当社のCSR(企業の社会的責任)として環境配慮の側面から耐火木造に取り組み始めた。企業の環境経営に対する注目も高まっており、国内の森林保全や林業の育成、地方創生も重要になっている。そうした面からも、木材の需要を伸ばしていかなければいけない。戸建て住宅だけでは国産材の需要に限界があり、都市部で民間の事業用ビルに木材を活用することは重要だと捉えている。

 銀座8丁目開発計画では、木の枝が茂るような森をつくりたい。内部に入っても木に囲まれるイメージだ。

 木造化の動きは一時的な話題づくりで終わっては意味がない。当社は中規模開発を得意とし、年間に約10棟が着工し、約10棟が竣工する。うち、少なくとも1棟は木造に取り組みたい。中層の老人ホーム建設に当たっても木造・木質化を検討中だ。(談)

(仮称)銀座8丁目開発計画

  • 所在地:東京都中央区銀座8-9-15
  • 敷地面積:251.98m2
  • 延べ面積:2451.00m2
  • 高さ:最高高さ約56m
  • 構造:鉄骨鉄筋コンクリート造・一部鉄筋コンクリート造(地下)、木造+鉄骨造(地上)
  • 階数:地下1階、地上12階
  • 耐火性能:耐火建築物
  • 発注者:ヒューリック
  • デザイン監修者:隈研吾建築都市設計事務所
  • 設計・施工者:竹中工務店
  • 着工時期:2020年の年初
  • 完成時期:2021年秋ごろ

この先は有料会員の登録が必要です。「日経アーキテクチュア」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら