賃貸住宅の選択肢の一つとして定着した交流型の住まい。いまや、若者だけのものではなくなった。前記事までに取り上げた住宅の「挑戦」と「その後」を手掛かりに、今後の住宅設計へのヒントを探る。

 「家族以外の他者と住まいの一部を共同で使う」という居住形態は、2000年代以降に台頭してきた。その背景について、空間研究所代表で日本女子大学教授の篠原聡子氏は、「家族規模」「生活を支えるネットワーク」「経済」の3つが縮小に向かってきたことが大きいと話す。

 「本来あるべき社会との接点が希薄になるなかで、自分の生活を支えるネットワークを取り戻そうと、より他者を受け入れる住まいが再認識されている」(篠原氏)

 当初は、リノベーションによって工事費を抑え、賃料の割安感で単身者を募る形態が主流だった。しかし、本特集で対象にした2010年ごろから、安さだけを目的としたシェアよりも、付加価値としての「交流」に重きを置いた計画が目立ってきた。

 09年に竣工したヨコハマアパートメント(「アトリエ広場が10年経て地域交流にシフト」参照)の設計を手掛けたオンデザインパートナーズの西田司代表はこう語る。「価値観の違いを混ぜ合わせた交流から、イノベーションが生まれる。空間や時間をシェアするだけでなく、そうした他者との接点を住宅に取り入れることで、日々の暮らしはより豊かにできる」

 “異なる価値観”の分かりやすい例で言うと、近年は外国人との交流を付加価値とする取り組みも増えている。西田氏がこれを実践した近作の1つが、20年4月に供用を開始する神奈川大学の国際学生寮だ。国内外の学生が共同生活を送り、国際的な感覚を養う〔写真1〕。

〔写真1〕異文化交流が付加価値
神奈川大学の新国際学生寮。オンデザインパートナーズが設計を手掛けた。個室面積を最小限に抑え、交流スペースとなる「ポット」を踊り場など随所に設けた(写真:長井 美暁)
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 シェア金沢(「“人づくり”で転換目指す ごちゃ混ぜの街」参照)を運営する佛子園は今夏、石川県輪島市の「輪島カブーレ」内に、民泊対応のゲストハウスをオープンさせた。高齢者や障害者、若者に加え、訪日外国人まで「ごちゃ混ぜ」にして、街をより活性化する試みだ〔写真2〕。

〔写真2〕訪日外国人も「ごちゃ混ぜ」
佛子園が展開する「ごちゃ混ぜ」まちづくりの近作「輪島カブーレ」の拠点施設。今夏、エリア内に訪日外国人客なども見込むゲストハウスをオープンさせた(写真:佛子園)
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