既存住宅を改修したシェアハウスが主流だったなか、2012年に竣工した「シェア矢来町(やらいちょう)」は、新築シェアハウスの先駆けだ。個室7室という規模が、家族のようなつながりを育む。課題は近隣との関係づくりだ。

 空間研究所代表で日本女子大学教授の篠原聡子氏とA studio代表の内村綾乃氏の共同設計によるシェアハウスだ〔写真1〕。2012年3月に竣工し、14年の日本建築学会賞作品賞を受賞した。地上3階建ての建物には個室が7室あり、7人が暮らせる。内村氏は竣工当初からの入居者で、運営にも携わっている。

〔写真1〕リビングとキッチンは3階に
3階のリビングは入居者たちの食事の場所でもある。天井高は3.1m。正面の建具を開けると吹き抜けを介して1階の土間空間につながる。左手は個室の1つで、リビングの床より60cm浮かせている(写真:安川 千秋)
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 個室以外は、1階にワークスペースが2つと洗面浴室、2階にゲストルームとトイレ、3階にキッチンとリビングがある。共用玄関を兼ねるワークスペース1は3層吹き抜けの土間空間で、建物のファサードにはテント膜を採用〔写真23〕。入居者やゲストは、ファスナーを開閉して出入りする。

〔写真2〕人が入りやすい共用の土間を手前に
1階のワークスペースは土間空間が連続する。篠原聡子氏が育った家にも土間があり、当時の使われ方を思い起こして採り入れた。靴のまま建物内に入れるのも長所だ(写真:安川 千秋)
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〔写真3〕内外を緩やかにつなげるテント膜
建物の内外をテント膜という柔軟な材料で区切ることで、内部空間と地域社会が緩やかにつながる状況を狙った。テント膜は北側のため予想より劣化は少ないが、出入りのために頻繁に開閉するファスナーは、これまでに2回交換した(写真:安川 千秋)
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 「単身者の住まいにオルタナティブ(新しい選択肢)を示したかった」と篠原氏は話す。そう考えたきっかけは、「コルテ松波」(09年)の改修プロジェクトだった。地上4階建てのワンルームマンションで1階の3部屋をコモンスペースに変えたところ、住人同士や地域との交流が生まれた。「コモンスペースがあると何かが起こる」と実感した。

 篠原氏はこう続ける。「新築のシェアハウスなら、初めからオープンなコモンスペースをつくれる。交流を生み出すスペースを現代の住まいに残していくには、シェアという暮らし方も向いていると考えた」

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