伝統的な文化の面影を残す東京・日本橋浜町。エリアの価値を高めるための中核施設として、2月に開業したホテルだ。地元住民やワーカーをはじめ、多様な利用者を受け入れる「サードプレイス」の性格も備えている。

〔写真1〕街に顔を向けるレストラン
ブルーノート・ジャパンが運営するレストラン&カフェ「SESSiON(セッション)」。内装を担当したA.N.D.の小坂竜氏の提案により、左奥の専用エントランスは、建物のコーナー部を切り取って街に対して顔を向ける格好にしている(写真:山本 育憲)
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  職住が混在する街に、地域の様々な人々が利用し、観光客も訪れるハブとなる場所をつくる──。

 「HAMACHO HOTEL TOKYO(ハマチョウ ホテル トウキョウ)」の企画、設計、運営を担当するUDSのデザイナーとしてプロジェクトに携わった寶田陵氏(現the range design(ザ レンジ デザイン)は、「サードプレイス・ホテル」というイメージを抱いていたという。つまり、住む場所とも働く場所とも異なる「第3の場所」としての性格が、ホテルの新しい機能として求められるという見方だ。

 この日本橋浜町は、事業主である安田不動産が再開発を進めてきたエリアだ。ホテルの敷地周辺には、同社の開発した複数のオフィスビルが立つ。今回、分譲集合住宅などと比較すれば収益性は落ちる可能性もあるが、街のポテンシャルを高める施設としてホテルの導入を決めた。「オフィスや住宅の個々のスペックを上げるだけではエリアの価値は上がらない」(同社)という認識によるものだ。

 建物全体では、ホテルと賃貸住宅が複合している。1階レベルには、ホテルフロントのほか、それぞれの客室や住戸へのアプローチ、84席のレストラン&カフェ、ホテルのテーマである「クラフト」(手づくり)を象徴するチョコレートショップなどが陣取る。多様な人々が日常的に交流する機会を持てる、ホテルの在り方を象徴するフロアだと言っていい。

 安田不動産は、この1階フロア全体に一体感を持たせたいというイメージを打ち出し、関係者間の意識の共有を図った。というのは、ホテル、レストラン、住宅それぞれ運営・管理者が別で、インテリアのデザイナーもホテルとレストランでは異なる。放っておくと、まとまりのないものになりかねないからだ。

 実際に、ホテルのフロントとレストランのバーの間では、それぞれの設計者がアイデアを出し合い、天井や床の仕上げなどが分断されて見えないよう、調整を行った。両者のカウンターも、あえて連続感を持たせている。利用者の属性にかかわらず、シームレスに場所を使ってもらうためだ。

連続感のある1階レストランとフロント
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〔図1〕異なるテナントの空間をシームレスに
SESSiONのバーカウンターまでは、フロントを含むホテル側と床・壁・天井の仕上げを統一し、一体感を与えている(左写真)。バーとフロントの間にソファコーナーを設け、右手のホテル入り口からの「受け」のスペースとした。左奥に進むと客室階へのエレベーターと並び、住宅用のエントランスがある

〔図2〕ホテルと住宅の動線を重ねたセンターアレイ
賃貸住宅のユーザーはホテルのロビーを通って各階に向かう。建物を縦に二分したうえで、両者が背中を向け合わない動線を1階で計画した。突き当たりには住宅専用のエントランスもある。店舗や2階へのアプローチも兼ねる

〔図3〕外部に開いたショップ&カフェ
南東側にあるチョコレートショップ&カフェ「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO(ネル クラフト チョコレート トーキョー)」。裏通りに面する場所で開口部を多く取り、地域からの利用も促す。オープンキッチンとし、ホテルのテーマの1つである「クラフト」(手づくり)を演出。ホテル側(建物内部)からもアクセスできる

〔図4〕コンセプトを体現した「TOKYO CRAFT ROOM」
賃貸住宅のユーザーはホテルのロビーを通って各階に向かう。建物を縦に二分したうえで、両者が背中を向け合わない動線を1階で計画した。突き当たりには住宅専用のエントランスもある。店舗や2階へのアプローチも兼ねる

(写真:山本 育憲)

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