本連載では、クリエーティブ分野に詳しい公認会計士が、どんぶり勘定になりがちな設計事務所の会計について助言する。「会計感覚」を磨き、お金の話に対する苦手意識を消し去ることができるよう、回を追って解説する。

(イラスト:香川かづあき)

 皆さんは、自社の損益構造に無頓着のまま「どんぶり勘定」を続けていたり、収支の管理を怠っていたりしないだろうか。そこで、下の〔図1〕設問に回答してみてほしい。

〔図1〕思い当たりませんか? 「会計感覚」チェックリスト
中小規模の建築設計事務所を想定した10の設問。該当する項目にチェックを入れてみてほしい。どの設問も、「YES」では経営上の問題が起こり得る。3つ以上が「YES」だったら要注意。その理由は、連載を通じて明らかにしていきたい(資料:公認会計士山内真理事務所)
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 巨大プロジェクトに参画する大手建築設計事務所であれば、広範なビジネスリスクをコントロールする必要に迫られるため、自社の損益構造や収支構造、資産、負債などの財産状況に常に敏感にならざるを得ない。本来、中小規模の建築設計事務所であっても変わらず、そこから目をそらすとお金のやり繰りが不安定になる。

 例えば、設問の(4)。プロジェクト単体の採算が緻密に設計されていない場合を、よく見かける。1つには、総額の大きな数字に慣れると、足元の細かい損益計算に目が行き届かなくなるからだと想像できる。もう1つには、そもそも原価計算や管理会計のフレームワークになじみがない建築士も多いのではないか。

自転車操業に陥らないために

 あるいは、設問の(7)。建築設計事務所の場合は一般的に、プロポーザルなどの企画・提案の段階で先行してコスト負担が生じ、仮に受注に失敗すれば当該コストの回収は困難になる。それが積み上がると大きな赤字要因になる。

 また、受注が確定して着手金を得たとしても、基本設計、実施設計などのプロセスでスタッフの人件費、外部に対する業務委託費、模型の材料費など先行してコストが生じる。その回収は各設計プロセスの完了時以降になる場合が多い。そうした資金繰りのタイムラグにより、自己資本に乏しい小規模事務所が自転車操業の状態に陥るケースを見かける。

 それぞれの設問は、会計の仕組みの中でお互いに関連し合っている。本連載を読むうちに、会計の基本を理解し、お金の話に対する苦手意識を払拭できるようにしたいと考えている。

 さて筆者は、アート、カルチャー、クリエーティブと言われる領域を中心に会計サービスを提供する事務所を営んでいる。顧客には、建築、不動産、まちづくりの仕事に携わる方々もいる。「経済と文化」という、ときに対立しかねない二者の間で触媒の役割を果たしたいと考えてきた。その中で、想像以上にお金の話に対する苦手意識を持つ事務所経営者が多いことを知った。

 しかし、恐れるに足りず。というのは設計事務所の経営者を支援してきた立場から見ると、建築士と会計士には似た面があるからだ。会計を理解する際の心構えのため、筆者はいつも以下のような話をしている。

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