外壁や床の検査では、見た目から劣化の程度を判断する場面が多い。この点で、人工知能(AI)による画像認識は建物の維持管理と相性がいい。構造物の検査を専門とする企業からIT企業まで、様々なプレーヤーが熱視線を送っている。

 ジャスト 
1年でAI事業立ち上げ

 建物の外壁の写真をアップロードして判定ボタンをタップするだけで、「名探偵ジェイ君」が仕上げ材の種類を言い当てる。そんなスマホアプリ「J-Brain-外壁の仕上材判定AI」をご存じだろうか〔図1〕。

〔図1〕目的に応じたAIを次々に開発
(1)コア抜きの可否を診断するAI
鉄筋コンクリート造の壁のX線画像から、コア抜きが可能かどうかをAIが判定する。目視での判断の場合、X線画像に鉄筋がはっきりと写らず、誤って切断してしまう恐れがあった(資料:ジャストの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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(2)外壁の仕上げ材を判定するAI
外壁の仕上げ材判定の流れ。AIを現場に導入する方法を検討する中で、アプリやウェブ上でのサービス提供を試みた(資料:ジャストの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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ジャスト 取締役
イノベーション企画部 部長

角田 賢明氏

安藤純二社長の誘いを受けてジャストに入社。IBM、外資系投資銀行、経営コンサルタント、スタートアップ支援を経て現職(写真:ジャスト)

 開発者は、年間3000棟以上の調査・診断業務を手掛けるジャスト(横浜市)。これまで蓄積してきた調査データと検査ノウハウを生かして自社の業務を効率化しようと、AIを活用するプロジェクト「J-Brain(ジェイブレイン)」を2018年に立ち上げた。

 AI人材の確保に奔走し、6人のIT技術者を獲得。わずか1年で矢継ぎ早に開発を進めた。仕上げ材判定アプリ以外に、鉄筋コンクリート(RC)造の壁のコア抜き可否診断、屋根のさびの自動検出など、調査・診断に使えるAIを複数リリースした。

 プロジェクトを率いるジャストの角田賢明取締役は、「部材種別の判定や劣化判定を自動化するAIも開発中だ。目的に応じたAIをそろえ、業務の効率化につなげたい」と語る。

 ジャストのAIは、深層学習(ディープラーニング、「AIのキホン ディープラーニングって何?」を参照)によるものだ。ディープラーニングではAIに効率的に学習させるため、「例題」と「正解」をセットにした教師データを与える。データ数が少なく品質が悪いと、精度も悪くなる。

 ジャストが1年で様々なAIを開発できたのは、品質の良い教師データをふんだんに用意できたからだ。「検査を熟知した人材を多く抱え、過去の調査データが豊富にあったからこそ、精度の高い教師データを作成できた」(角田取締役)

 教師データを用意できず、AIを活用したくてもできない。データを作成してくれないか──。そんな依頼が複数舞い込んだのをきっかけに、ジャストは19年1月から、教師データ作成サービスまで始めた〔図2〕。

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〔図2〕教師データのラベル付け(アノテーション)も事業化
損傷箇所を色分けしてラベル付けする。ジャストは教師データ作成後の検証や、AIの開発支援も展開する(資料:ジャスト)

 角田取締役は今後の事業展開について、「様々な構造物の画像診断プラットフォームを開発している」と明かす。「構造物の画像を入力し、何を検出したいかを選択するだけで、判定から報告書の作成までを自動化する。現場の負担を半減するサービスを目指す」と鼻息は荒い。

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