公園などにある「あずまや」の倒壊が後を絶たない。取材を進める中で見えてきたのは、不特定多数の人が利用する公共性の高い建物であるにもかかわらず、安全性の確保を設計者任せにしている実態だ。

 2018年9月に西日本で猛威を振るった台風21号。高知県安芸市では、遍路の休憩施設としても利用されていた浜千鳥公園内の木造のあずまやが、隣接する道路上に横転した〔写真1〕。05年に台風の影響で同公園内のあずまやが倒壊し、住民の要望を受けて再建したものだった。

〔写真1〕台風の影響で倒壊
高知県安芸市で倒壊した木造のあずまや。延べ面積9.7m2、高さ約3.4mで2011年に設置された(写真:高知県安芸市)
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 台風だけでなく、地震の影響でもあずまやが倒壊している。同年9月に北海道のほぼ全域で停電を引き起こした北海道胆振東部地震。この地震の影響で、北海道当別町の公園内に設置していた木造のあずまやの柱が折れて、屋根が崩落した〔写真2〕。

〔写真2〕屋根が真下に崩れ落ちる
2018年9月の北海道胆振東部地震の影響で、北海道当別町の白樺公園内にある木造のあずまやが倒壊した。1994年に設置したもので、延べ面積は37.26m2(写真:北海道当別町)
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 19年6月に発生した山形県沖を震源とする最大震度6強の地震でも、あずまやが倒れた。総務省消防庁によると、この地震の影響で全壊した住宅はゼロ、半壊は36棟だった。揺れの強さに対して家屋の被害は少なかったが、山形県鶴岡市の大泉小学校に設置していた木造のあずまやが倒壊した〔写真3〕。

〔写真3〕4本の柱のうち3本が折れる
大泉小学校(山形県鶴岡市)に設置していた相撲場のあずまやが倒壊。1988年に設置したもので、柱の老朽化に伴い改修工事を予定していた(写真:日経アーキテクチュア)
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 この他にも、地震や台風などの影響であずまやが倒壊または損傷した事例は枚挙にいとまがない〔写真4図1〕。中には、設計や維持管理の不備で倒壊したとみられるケースもある。

〔写真4〕倒壊時に1人負傷
愛知県の尾張広域緑道にあるあずまやの鋼製の柱が2019年4月に根元から倒れた。1993年に設置したもので、柱の地際部に腐食があった(写真:愛知県)
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〔図1〕2018~19年で少なくとも17件のあずまやに被害
所在地(被害件数) 設置場所 被害状況
北海道当別町(1) 公園 北海道胆振東部地震の影響で倒壊
北海道厚真町(1) 公園 北海道胆振東部地震の影響で損壊
山形県鶴岡市(1) 学校 山形県沖を震源とする地震の影響で倒壊
愛知県扶桑町(1) 公園 強風の影響で倒壊、1人負傷
滋賀県大津市(1) 公園 台風21号の影響で屋根部材が損傷
滋賀県長浜市(1) 公園 台風21号の影響で屋根部材が損傷
滋賀県近江八幡市(2) 公園 台風21号の影響で屋根部材が損傷
大阪府門真市(1) 公園 台風21号の影響で支柱がずれる
大阪府高石市(1) 公園 台風21号の影響で屋根部材が損傷
大阪府泉南市(3) 公園 台風21号の影響で屋根部材が損傷
奈良県奈良市(1) 公衆浴場 倒壊して1人死亡、2人負傷
岡山県岡山市(1) 公園 強風の影響で倒壊、1人負傷
高知県安芸市(1) 公園 台風21号の影響で倒壊
沖縄県沖縄市(1) 公園 台風21号の影響で倒壊
2018年と19年に被害を受けたあずまやの所在地や被害状況。倒壊に巻き込まれて、利用者が死亡したケースもある(資料:国土交通省の資料や取材を基に日経アーキテクチュアが作成)

 そもそも、あずまやはどのような基準に基づいて設計する必要があるのか。取材を進めると、木造のあずまやについては、安全性の確認方法が設計者に委ねられている実態が浮き彫りになった。

曖昧な「あずまや」の定義

 あずまやとは、どのような建築物を指すのだろうか。広辞苑で「あずまや」と引くと「四方の柱だけで、壁がなく、屋根を四方に吹き下ろした小屋。庭園などの休息所とする」とある。

 しかし、公園やパーキングエリアなどを見ると、屋根を支える柱が4本のタイプの他、1本のタイプ、壁を一部設置しているタイプなど様々な種類のあずまやがある。構造種別にも木造や鉄骨(S)造がある。

 国土交通省住宅局建築指導課の青木亮課長補佐によると、建築基準法では「あずまや」について詳細に定義していない。「建設予定の施設があずまやに該当するかどうかは、特定行政庁によって判断が異なる場合がある」(青木課長補佐)

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