体育館のフローリングが剥がれ、球技に興じる利用者に突き刺さる──。想像するだに痛々しい事故が、各地で発生している。木の性質を踏まえた設計や施工、管理をしないと、事故は繰り返される。

 2019年2月26日午前10時過ぎ。名古屋市東スポーツセンター第1競技場でバレーボールをしていた女性が床に滑り込んだ際に事故は起こった。フローリングから剥がれた長さ15cm、幅3cm、厚さ2cmの木片が右足から尻にかけて突き刺さり、大けがを負ったのだ〔写真12〕。

〔写真1〕木片が刺さって緊急搬送
名古屋市東スポーツセンターで木片が剥がれた。フローリング材は単層で、1枚のサイズが長さ50cm、幅7.8cm、厚さ1.8cmだ。工法はダボを設ける特殊張りだった(写真:名古屋市)
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〔写真2〕点検で予兆を捉えられず
2002年に竣工した名古屋市東スポーツセンターの外観。事故があった第1競技場アリーナの面積は1620m2だ。事故当日は、開館時に職員が点検をしていたが、不具合を見つけられなかった(写真:名古屋市)
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 その4日前の22日午後2時30分ごろ、埼玉県三芳町の総合体育館でも同様の事故が起こっていた。フットサル大会のウオーミングアップでスライディングをした男性の尻に長さ30cmの木片が刺さった。男性は手術で木片を摘出。8日間の入院を余儀なくされた〔写真34〕。

〔写真3〕2006年竣工の施設でも事故発生
事故があった三芳町総合体育館の外観。2006年に竣工した施設だ。フローリングの補修は部分的に実施していたが、事故があった箇所については補修履歴がなかった(写真:三芳町)
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〔写真4〕繊維方向に沿って裂ける
三芳町総合体育館でフローリングが剥がれた箇所。木の繊維に沿って長さ42cmの木片が剥離し、30cm分が人に刺さった。複合フローリングを、ダボのない特殊張り工法で施工していた(写真:三芳町)
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 木片が剥がれて刺さる事故は頻繁に発生している〔図1〕。なぜフローリングは「凶器」に変わるのか。消費者庁の消費者安全調査委員会がこの種の事故を分析した17年5月の報告書や、フローリング業界への取材を基に、原因と対策を探る〔図2〕。

発生年 運動種目 負傷部位 入院日数 完成または全面改修からの年数 床の種類、表面の材質 工法
2019年 フットサル 左臀部 8日 13年 複合、カバ 特殊張り
2019年 バレーボール 右足~臀部 不明 17年 単層、アサダ 特殊張り
2017年 バレーボール 大腿部 不明 7年 単層、カナディアンメープル 普通張り
2015年 フットサル 背中 24日 25年 単層、カバ 特殊張り
2014年 バレーボール 腹部 12日 31年 不明 不明
2013年 バレーボール 腹部 27日 2年 複合、カバ 普通張り
2013年 バレーボール 腹部 4日 26年 単層、アサダ 特殊張り
2011年 バレーボール 胸部 7日 8年 単層、カバ 特殊張り
2006年 バレーボール 胸部 7~10日 16年 不明 不明
不明 バレーボール 左大腿部~下肢 不明 不明 不明 不明
〔図1〕バレーボール中の重大事故が多い
床の種類は単層フローリングを「単層」、複合フローリングを「複合」と記した(資料:消費者庁の資料や取材を基に日経アーキテクチュアが作成
〔図2〕消費者庁が2017年に「警告」
消費者庁の消費者安全調査委員会がまとめた報告書。文部科学省などはこれを受けて注意喚起をしたが、その後も事故は起こっている(資料:消費者庁)
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