総勢4人の設計事務所が、中国の大手スマートフォンメーカーが建設する新本社をコンペで獲得した。設計開始から約2カ月で着工。ローカルアーキテクトとの作業分担や設計料の回収など、国内とは違うメリハリが求められた。

 「日本では一生かけてもこれほど大規模なプロジェクトはできなかっただろう」。そう語るのは、ICU(東京都中央区)の長田直之代表だ。中国武漢市で建設中の小米(シャオミ)武漢本社の設計を手掛ける〔写真1〕。敷地の広さは約3万m2、延べ面積は5万m2を超える〔図12〕。2019年5月に上棟を迎え、9月に竣工する予定だ。

〔写真1〕政府も期待する巨大計画
小米(シャオミ)が中国武漢市で進める武漢本社の建設現場に立つ、設計者の長田直之氏。敷地近くで地下鉄の延伸が決まるなど、小米の武漢進出に政府の期待も大きい。4月末に撮影(写真:ICU)
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〔図1〕階段と回廊が透けて見えるガラスの箱
小米武漢本社の北側外観イメージ。全体をガラスのカーテンウオールで覆い、フロア外周の回廊や階段が外から透けて見える。中央のロゴ「MI」(モバイル・インターネット)は小米のロゴ(資料:ICU)
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〔図2〕シンプルさを徹底
西側外観のイメージ
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窓際に配置する回廊のイメージ
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「中国ではかつてと違い、アイコニックな建築よりもランドスケープや環境に配慮した質の高い建築が求められる」と長田代表(資料:ICU)

 中国北京市に本社を持つ小米は、米国のアップルに次いで世界シェア4位を占めるスマートフォンのメーカーだ。創設から8年後の18年7月に香港証券取引所に株式上場した。世界中に約2万人のスタッフを抱え、今後の事業拡大を見据えて、武漢市に2つ目の本社計画を立ち上げた。

安藤事務所OBと組んで挑む

 コンペの話は突然だった。18年8月、中国の知人から「国際指名コンペに招待できる日本人建築家を紹介してほしい」と依頼を受けた。だが、提出まで3週間程度しかなく、頼める人がいない。コンペ参加費として約300万円が支払われることもあり、長田代表は自ら挑戦することにした。

 古巣である安藤忠雄建築研究所のOBたちに声を掛け、ランドスケープデザインなどを依頼。急ピッチで提案書をまとめて出したところ、9月上旬に設計者として選ばれた。

 小米のジェリー・シャン副総裁は、「選考過程では、小米の製品デザインの考え方と建築が一致するかを重視した」と話す。長田代表が与条件から導き出したキーワードは「アンビエント(環境)」だ。「中国でよく見られるダンサブルな(曲面を多用し踊っているような)デザインではなく、シンプルで主張しない建築を目指した」と、長田代表。

 建築は外殻をガラスのカーテンウオールで覆い、中心に置いた執務空間もガラスで囲む入れ子構造とした。各フロアの外周には回廊や階段などを設け、外から従業員の動きが見える〔図2〕。入れ子構造としたのは、小米はパソコン作業が多いので、光の量をコントロールし、直射日光を和らげる狙いがある。

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