中国政府が力を入れている国家プロジェクトの1つが「大湾区(グレーターベイエリア)」だ〔図1、2〕。広東省の9都市と特別行政区である香港、マカオが連携し、1つの大都市圏を構築しようというものだ。経済発展と対外開放をリードし、中国全体が発展する ための“エンジン”になると位置付けている。中国国務院は2019年2月、「大湾区発展計画綱要」を発表。22年までに基礎をつくり、35年までに全面的な計画達成を目指す。

〔図1〕中国一開かれた都市圏を目指す大湾区
大湾区は、広東省の9都市と香港、マカオの2つの特別行政区で構成する大都市圏。香港、マカオは、それぞれ中国と異なる行政制度を持つ。省都の広州市に政府を置く広東省と、香港、マカオの3政府が連携し、中国の中で最も開かれたエリアとなることを目指す。大湾区内での関税緩和を発表するなど、経済発展に向けて動きだしている(資料:広東省人民政府、香港特別行政区政府、澳門特別行政区政府の2019年4月の公表資料を基に日経アーキテクチュアが作成、日本円への換算は2019年4月時点のレートで日経アーキテクチュアが算出)
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広東・香港・マカオ
大湾区
東京ベイエリア(首都圏)ニューヨークメトロポリタンエリアサンフランシスコベイエリア
面積 5万6000km² 3万6900km² 2万1500km² 1万7900km²
人口 7110万人 4400万人 2020万人 770万人
GDP 1.6兆米ドル 1.8兆米ドル 1.7兆米ドル 0.8兆米ドル
年間空港貨物取り扱い量 800万トン 360万トン 220万トン 120万トン
年間航空旅客数 2億200万 1億2400万 1億3220万 8130万
年間港湾コンテナ取り扱い量 6650万TEU 780万TEU 630万TEU 240万TEU
〔図2〕大湾区は世界一級のベイエリアに並ぶ
世界3大ベイエリアと大湾区の規模や国内総生産(GDP)、物流実績の比較(2019年時点)。物流実績は他を大きく上回る。中国の国家発展をけん引するモデル地区を目指す (資料:広東省人民政府、香港特別行政区政府、澳門特別行政区政府の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

 大都市圏の実現で重要なのが公共交通機関や高速道路などのインフラ整備だ〔図3〕。広東省の各都市と香港、マカオ間の移動時間は、急速に縮んでいる。18年9月に広州市と香港を結ぶ高速鉄道が開通。同年10月には、香港と珠海市、マカオを結ぶ、総延長55kmに及ぶ世界一長い海上橋「港珠澳大橋」が開通した。

〔図3〕ITCから主要都市や空港へは1時間内
鉄道や海上橋でつなぐ大湾区の主要都市間ネットワーク。新トウ駅と一体開発する凱達爾枢紐国際広場(ITC、詳細は次ページ)は、このネットワークの中で、重要な拠点となる。主要な空港や広州中心部、東莞、深セン、香港へ1時間以内でアクセスできる(資料:深セン市凱達爾集団の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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公共交通強化が広域発展の鍵

 拡充される交通網のそれぞれの結節点で、副都心開発が活発だ。その多くで「TOD(Transit Oriented Development、公共交通指向型開発)」が取り入れられている。TODは、公共交通機関を基盤とする、自動車に依存しない社会を目指す都市開発の考え方だ。駅など公共交通拠点の周辺に都市機能を集積。鉄道の上や地下空間を高度利用する。

 日本では東京の渋谷や新宿、丸の内など、過密な都市部などで実施例が多い開発手法であり、国土交通省は、日本が強みとする「質の高いインフラ」整備手法だとしている。

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