インド政府のスマートシティーミッションのなかに唯一、ゼロからつくる都市がある。2014年6月、アーンドラ・プラデーシュ州からテランガーナ州が分離。これに伴って新州都に決まったクリシュナ川下流域のアマラヴァティだ。

 現在はテランガーナ州のハイデラバードを共同首都とし、24年には新首都を誕生させる。農業地域だった場所に約2万1700haの都市を建設する構想で、ル・コルビュジエが都市計画に携わった同国のチャンディガール(「巨匠建築家の都市も俎上(そじょう)に」参照) 、オスカー・ニーマイヤーによるブラジリアを想起させるプロジェクトとして注目される。

 さらに、ゼロから生む都市のためにデジタルツイン(実際の都市と“双子”となる3次元モデル)を立ち上げる。計画、建設段階からシミュレーションを可能とし、IoT(モノのインターネット)やドローンを用いるデータ収集によって、都市建設のリアルタイムの進捗管理のほか、運営段階では交通や環境の制御などに役立てる。

 南北5.5km、東西1kmに及ぶ中心部の地区のマスタープランを手掛けたのは、英国のフォスター・アンド・パートナーズとインド国内のハフィーズ・コントラクター〔図1〕。シンガポールのスルバナ・ジュロンも協力する。2016年の招待コンペで槇総合計画事務所らの提案が最優秀となったものの最終的に賛同を得られず、改めてフォスターらが選出されたという経緯がある。

〔図1〕農業地域に「緑と水の都」を建設
英国のフォスター・アンド・パートナーズが中心となってまとめたマスタープランのCGイメージ。グリッド状に区画した対象地の全長にわたって「緑の背骨」が走る(資料:Foster+Partners)
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 全体面積の6割を水か緑が占める。英建築家のエドウィン・ラッチェンスが都市計画に携わったニューデリーや、ニューヨークのセントラルパークを参照した計画だという。その中核の地区に、立法議会棟や高等裁判所を設ける。これらの建築は、ヴァーストゥ(インド風水)の原則に基づいて計画される〔図2~4〕。

〔図2〕象徴的な「尖塔」を兼ねる屋根
人造湖の中に立つ立法議会棟。裾の部分で広く張り出し、高さ250mの尖った頂部を持つ屋根で覆う。隣接する高等裁判所とともに、自然換気の効果を重視する屋根デザインを指向している(資料:Foster+Partners)
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〔図3〕世界最高水準の持続可能性を指向
複合用途地区。交通手段としては、電気自動車、水上タクシーを重視し、自転車専用ルートも整備する。日陰のある通りや広場を設け、歩きやすい都市とする(資料:Foster+Partners)
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〔図4〕インド風水にならった計画に
立法議会棟の内部。正方形平面が入れ子で層状になるなどのインド風水の原則に基づいて建築を計画し、この棟の場合は同心円状の空間に反映させている(資料:Foster+Partners)
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