適正な報酬の確保は、人材確保や事務所経営に直結する問題だ。告示98号の施行を受けて、報酬算定方法の見直しを検討する設計事務所は多い。新基準をいかに報酬増加につなげていくか、アンケート調査で探った。

 適正な報酬を得るため、設計者たちは苦心してきた。告示98号には、どれほどの実効性があるのだろうか。日経アーキテクチュアが実施したアンケートに105人の建築実務者が回答した。

 評価は分かれた。「新基準は報酬算定に役立つか」との設問に、「非常に役に立つ」「ある程度役に立つ」と答えた回答者は47.7%。これに対し、「あまり役に立たない」「役に立たない」は40.0%で拮抗した(Q1)。

Q1 新報酬基準は、報酬額算定に役立つか?

新基準への評価は分かれた。発注者への説明根拠として活用できると評価する意見がある一方で、強制力のない基準では何も変わらないとの意見もある。調査概要は新報酬基準の落とし穴参照
[画像のクリックで拡大表示]

役に立たない理由は?

  • 法律がどう変わろうと発注者からいくらでやれという関係性に変化がないため。
    (小規模設計事務所の意匠設計者、40代)
  • 2000m2以下などの建築物の、特に数百m2規模の報酬が極端に少なくなっている。
    (小規模設計事務所の意匠設計者、40代)
  • 基準と現実は、違いすぎるから。
    (小規模設計事務所の管理建築士、50代)
  • 報酬基準がアップされても、公共事業の入札制度が無くならない限り実際の業務報酬は増えない。
    (小規模設計事務所の意匠設計者、50代)
  • 見積もりで、根拠として作成しても、結果値切られたり、競争入札だったりするため、実効性が感じられないことが多々あるため。
    (中規模設計事務所の意匠設計者、40代)
  • 努力義務では発注者は会社独自の基準を変更しない。
    (中規模構造設計事務所の構造設計者、60代)
  • エンドユーザーに対して、建築士自身がどこまでこの制度について説明できるのか。
    (小規模設計事務所の意匠設計者、40代)

役に立つ理由は?

  • かなり詳細な部分まで基準が出ているので参考になる。
    (小規模設計事務所の意匠設計者、50代)
  • 理解のある顧客であれば、基準となる報酬基準があることで一定の指標にはできると思う。
    (官公庁・公社の発注・建物管理者、50代)
  • 基準がないと設計事務所の裁量で変わる恐れがある。
    (小規模設計事務所の意匠設計者、50代)
  • 標準外業務の明確化により客先要望に対する追加報酬の要求が可能になる。
    (大規模設計事務所の調査・企画担当者、50代)
  • 国の報酬規準の算定額と自社の算定額との比較が、発注者側でできる。
    (中規模総合建設会社の経営担当者、40代)
  • 標準業務量の見直しや、標準外業務が明確化されたことで、設計業務に、より人件費がかかっていることへのクライアントの認識が少し高まる。その結果業務報酬が若干上がる方向になる。
    (小規模設計事務所の個人事業主、60代)
  • 基本設計と実施設計の業務量比率の設定で基本設計の業務量の目安ができた。
    (小規模設計事務所の意匠設計者、50代)
  • 告示15号では業務量のバランスに違和感を感じていたが、今回は実態に近づいた。
    (大規模設計事務所の意匠設計者、60代)

 「役に立つ」理由には、標準外業務が明確化されたことを評価する声が多かった。告示を説明根拠として用いることで、標準業務との区別が曖昧だった業務に対して追加報酬を求めることができるためだ。

 一方、新基準でも報酬増額は見込めないとの意見もある。告示に強制力がないため、発注者が提示する報酬額は変化しないとの指摘などだ。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経アーキテクチュア」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら