当初の建築から築60年余りを経て違反状態になっていた木造の建物。この建物を法適合する高性能の「長屋」に改変した。土地の記憶の継承やコミュニティー形成を付加価値に、再生型の賃貸事業を実現した。

 東京メトロ・表参道駅から徒歩数分の住宅街。喫茶店の脇から敷地に入ると、小高い築山のある中庭に達する。北側に1957年築の母屋が残り、様々な表情の建物が、その庭を囲む〔写真1〕。

〔写真1〕手づくりの築山を再生の起点に
転倒防止補強柵を設置して残した築山のある中庭。「伯父は、表参道の一画に自らの手で日本風の庭園をつくった。その気持ちを大切にしたかった」と、大一の三田幸代代表は振り返る(写真:安川 千秋)
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 69年に付いた「ミナガワビレッジ」という名前を引き継ぐ建物は、SOHO(事務所兼用住宅)に利用できる賃貸住戸4戸、店舗2区画、時間貸しのフリースペースなどから成る〔写真2~4〕。個人住宅だった建物は検査済み証を未取得で、増築を繰り返すうち下宿やアパートの機能を持ち、1敷地4建物の違法状態になっていた。現オーナーで、賃貸不動産事業を営む大一(東京都世田谷区)の三田浩司会長は同地を伯父から相続。昔遊んだ築山に思い入れを持ちながらも、老朽化した建物群を「建て替えるしかない」と考えていた。

〔写真2〕交流用のフリースペースを確保
母屋南側にあるフリースペースを見下ろす。共同住宅の共用部ではなく、長屋の一画の物販店頭として計画しているため、竪穴区画や異種用途区画の界壁が不要となっている(写真:安川 千秋)
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〔写真3〕表通り側では上屋のみ新築
調査プロセスで母屋の基礎の打ち直しや最奥部の棟の建て替えが不可避と分かった。その工事の搬入動線を確保するため、残す予定だった道路側の建物は解体に踏み切った(写真:安川 千秋)
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〔写真4〕半地下の区画を喫茶店に
店舗区画。既存の車庫の基礎を生かし、半地下とした。耐震補強を行った母屋側に水平力を負担させ、構造体の目立たない空間を実現。コーヒー店、ドーナツ店の2業態が同居する(写真:安川 千秋)
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 これに対し、事業コンペに応じた再生建築研究所(同渋谷区)と東急電鉄のチームは、「残せる」という案を提示した。オーナー側は、その再生案を選んだ。

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