建物には、音の伝わりやすさに関して設計者が見落としがちなポイントがある。音の伝わり方を理解したうえでそうしたポイントを押さえれば、効果的な騒音対策が施せる。基本的な対策は、空気伝播音が「遮音・吸音」、固体伝播音が「防振」だ。建物で実際に生じた音トラブルを紹介し、その原因と対策を解説する。

 空気伝播音  換気口から外部騒音が屋内に響く

 外部から室内に入ってくる音の対策は、大きな開口部となる窓などで進化した。しかし、集合住宅では外部騒音に対する新たな配慮が必要となっている。それが、給排気に使う換気口の防音だ。

 集合住宅は利便性を求めて主要駅など交通機関の間近に建てる例が多い。この際に問題となるのが、定期的に聞こえる交通騒音だ。音量の大きな交通騒音は、換気口のような小さな開口部から入る音も室内に大きく響かせる。空間デザインだけに目を向けていると、外部騒音の死角は見落としがちだ。

 熊谷組技術研究所環境工学研究室の財満健史室長は、「集合住宅ではアイランド型キッチンがはやっている。ガスコンロなどがリビングルームに近くなるため、レンジフードから入った外部騒音が生活空間に響きやすい」と話す。

 対策としては、防音機能を備えたレンジフードやダクトへの消音チャンバーの設置が有効だ。

 長谷工コーポレーションでは、換気口に設置する防音装置を開発した。外壁側の防音フードと壁内を通す消音スリーブの2段構えで防音する機構だ。

 同社技術研究所第3研究開発室の會田祐チーフは、「条件によって騒音の低減レベルは異なるが、窓が二重サッシで直径10cmの換気口に開発した防音装置を設置した場合、道路からの騒音は建物前と室内で35dB(デシベル)ほどの差が出る」と説明する。

1 開口部 小さな開口部も対策は怠らない
外部騒音への対策は窓などの大きな開口部で技術が進化してきた。一方、給排気の換気口など小さな開口部ではまだ十分ではない。アイランド型キッチンの普及などから、小さな開口部の騒音対策が求められている(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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長谷工コーポレーションが開発した換気口に設置する防音装置。外壁側の防音フードと壁内を通す消音スリーブの2段構えで防音する機構だ(写真:長谷工コーポレーション)
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