(イラスト:宮沢洋)
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Q1 別の部分とみなす増築って?

A
  • 開口部のない耐火構造の壁・床による区画が基本条件
  • 避難別棟は往来できる開口の有無、排煙別棟は防火性能の遮炎性能の有無が分かれ目に
  • 避難別棟に、渡り廊下の規定が登場

 既存不適格建築物を増築する際に、現行法規はどこまで適用されるのか。避難や排煙の規定については、一定の条件を満たすと「別棟」扱いとなり、既存部分に現行法規が遡及されない。つまり、既存不適格の状態を継続できる。ただし、避難規定と排煙規定では、別棟とみなす条件が異なるので注意したい。

 避難規定における別棟の条件は、「開口部のない耐火構造の床または壁で区画されている」ことだ(建築基準法施行令137条の14第1項2号)。この条件を満たす場合、既存部分では直通階段、歩行距離、廊下の幅員、2以上の直通階段、避難階段などの避難施設と非常用照明装置に関して現行法規が遡及されない。

 例えば、共同住宅のホールと物販店舗が並んだ既存建築物で、物販店舗の隣に物販店舗を増築する場合〔図1の上〕。中央の既存店舗は増築部分と開口部でつながっているため別棟とみなせず、避難規定が遡及する。左側の共同住宅ホールは物販店舗側と開口部のない耐火構造の壁で区画されているため別棟扱いとなり、避難規定は遡及しない。

〔図1〕避難別棟と排煙別棟は開口部の扱いが異なる
避難規定では「開口部のない耐火構造の壁・床」で区切った場合に別棟扱いになる。排煙規定では「開口部のない耐火構造の壁・床」または「遮煙性能のある防火設備」で区切ると別棟とみなされる
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 排煙規定では、「開口部のない準耐火構造の床または壁」に加えて「遮煙性能を持つ防火設備」で区分されていれば別棟とみなされる(令137条の14第1項3号)。

 例えば、2つ並んだ既存の物販店舗の横に物販店舗を増築する場合はどうか〔図1下〕。2つの既存店舗と増築店舗の間にはそれぞれ防火設備がある。このうち中央の既存店舗の防火設備は遮煙性能を備えているため、増築部分とは別棟扱いになる。一方、左側の既存店舗の防火設備は遮煙性能がなく、同じく遮煙性能のない防火設備を持つ増築部分とは廊下越しに一体化する。そのため左側の既存店舗と廊下部分は別棟とならず、いずれも排煙規定が遡及される。

渡り廊下による連結も別棟可能

 避難規定については2016年6月、渡り廊下で連結した部分も一定の条件を満たせば別棟としてみなされることになった(令117条2項2号)〔図2〕。渡り廊下でつなぐ両側の棟の隔離距離の確保、避難経路として使わないことなどが条件で、渡り廊下内の開口の仕様、渡り廊下と接する建物部分の避難経路の位置などが細かく規定されている(16年国土交通省告示695号)。

〔図2〕渡り廊下でつないだ場合も「避難別棟」扱いに追加
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2016年6月、一定の条件を満たす渡り廊下でつないだ場合も別棟として扱われるようになった

 この法改正は、病院や工場などの増築を容易にする目的がある。従来は既存部分と増築部分を一体化して避難規定を適用する必要があり、増築のハードルが高かった。渡り廊下でつなぐ増築が別棟扱いになると、例えば既存部分は仕様規定のルートA、増築部分は避難安全検証法のルートBといった切り分けもできるようになる(令129条の2の2)。