竣工後に地盤トラブルが発生──。原因が分からず、設計者に責任追及の矛先が及ぶこともある。そんなリスクに備えるためには、地盤の基礎知識が不可欠だ。まずは3回にわたって「圧密沈下」を解説する。

(写真:日経アーキテクチュア)
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 軟弱地盤の造成工事では地盤改良と併用する形で、盛り土で沈下を促進し、その収束を待ってから建物を建てる例がよくある。この場合、「沈下の収束」の見極めが重要なポイントになる。この見極めが不十分で、建物完成後にトラブルが生じるケースは意外に多い。

 当社の調査例を紹介しよう〔写真1、図1〕。この建物(ドラッグストア)は、軟弱地盤の敷地に盛り土したうえで直下のみ杭改良していた物件だ。完成後に建物周囲が徐々に沈下し、杭が支える建物との間に高さ数十センチの段差が生じた。調査時点では写真1のように、段差に後施工でアスファルト材をすり付けてしのいでいた。圧密沈下が収束する前に建物を建設したことが原因だ。

〔写真1〕建物完成後に周囲の敷地地盤が沈下
直下のみ杭改良した建物の完成後、周辺地盤の沈下が進行。調査時点で建物の犬走りとの間に数十センチの段差が生じ、アスファルト材で埋めていた(写真:藤井基礎設計事務所)
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〔図1〕原因は盛り土による圧密沈下
写真1のトラブル例のメカニズム。造成時の盛り土荷重で生じた圧密沈下が未収束の段階で、建物を建設したとみられる(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)
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 こうしたトラブルの原因を理解するうえで、まず圧密沈下のメカニズムを知る必要がある。土中には土の粒子とともに、その隙間に水(間隙水(かんげきすい))や空気が含まれている。砂やれきのように土粒子が大きい構造(単粒構造)に比べて、シルト・粘土のように小さい構造(蜂の巣構造など)のほうが、間隙水をより多く含んでいる〔図2〕。後者がいわゆる軟弱地盤の典型的な構造だ。

〔図2〕土中の「水」が沈下を左右
土の粒子の隙間には水(間隙水)や空気が含まれている。シルト・粘土といった小粒径の土質ほど含水率が高く、軟弱地盤を形成する(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)
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