外皮平均熱貫流率UA値が低いほど住宅は高断熱とされる。しかし、UA値を下げるために暖かさが損なわれては本末転倒。前真之・東京大学准教授は、過剰なUA値競争がもたらす「お手軽な小窓問題」を指摘する。

(イラスト:ナカニシ ミエ)
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 前回はUA値を半減させれば熱損失が半減し、暖房費は激減することに触れた。ただし、近年はこのUA値競争に夢中になるあまり、「高断熱のはずなのに、寒い家」が目に付く。

 低コストで高断熱をうたう住宅は総じて、「小窓」になる傾向がある。窓の大きさにこだわらない建て主にとっては一見、「ベスト解」のように見えるが、ここに落とし穴がある。

 当たり前のことであるが、UA値を小さくすることは目的でも何でもない。「暖かく暖房費を安く」することが本来目指すべきことである。確かにUA値を下げることは建物外皮からの熱損失、家計でいえば「支出」を減らすことに大きな効果がある。だが一方で熱取得、家計でいえば「収入」も忘れてはいけないのである〔図1〕。

〔図1〕住宅の熱損失と熱取得の関係
〔写真1〕無暖房でも人体や家電・太陽から固定収入あり
建物の各部位から漏れ出す熱ロスが「支出」。内部発熱や日射熱などの熱取得は「固定収入」。熱収支の「赤字」分が熱負荷となり、暖房で補填する必要がある。写真でも分かるように、固定収入は結構ある。特に日射熱による収入は大きいのだ(資料・写真:前真之)
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“太陽熱の収入”をお忘れなく

 前回詳述したように、冬に暖房をしていなくても、熱の収入は結構ある。家の中で家電製品や照明が消費した電気は最終的に全て熱になる。そもそも在室する人自体が熱を発している。そして1番大きいのが、窓から得られる日射熱である〔写真1〕。

 東京などの太平洋側では、冬は寒冷でも日射自体は豊富だ。太陽高度も低いため、南窓からは豊富な日射が期待できる。

 一般的な住宅の総窓面積30m2のうち20m2を南面とすれば、平均して約1200W/日の日射取得が見込める。これを半分の10m2の「小窓」にすると、約600Wと半減してしまう。この600Wの差がバカにできない。窓は確かに断熱最大の弱点であるが、熱の取得源でもあるのだ。

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