住宅の断熱強化は重要だが、「熱損失半減=暖房費半減」では施工費が割に合わない、と考える人がいるだろう。だが、それは誤解だ。「熱損失半減なら、暖房費は激減する」と、前真之・東京大学准教授は言う。

(イラスト:ナカニシ ミエ)
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 コストパフォーマンスが悪いと言われがちな断熱強化だが、その恩恵は大きい。今回は、「住宅の熱収支」から断熱強化の意義を考えてみよう。

 日本では冬期の寒さによって8つに分けられた「地域区分」と断熱レベル(断熱等性能等級)に応じて、「熱の逃げやすさ」の基準値が示されている〔図1〕。

〔図1〕断熱グレード別のUA値比較
建築物省エネ法では、地域に応じたUA値がある値以下になることを求めている。省エネ基準は1980年以降、2回にわたって強化され、99年制定の等級4が現在の要求水準。G1とG2は2020年にふさわしい断熱を目指す民間団体が提唱する、よりハイレベルの水準である。等級2、3のUA値は筆者による略算値(資料:国土交通省の資料を基に筆者が加筆)
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 建物部位ごとの「熱の逃げやすさ」は、熱貫流率「U値」で表現される。大きいほど熱が逃げやすく低断熱、小さいほど熱が逃げにくく高断熱となる。建物全体では各部位のU値を面積荷重で平均した外皮平均熱貫流率「UA値」が用いられる〔図2〕。

〔図2〕UA値が小さいほど高断熱
(イラスト:ナカニシ ミエ)
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断熱レベル強化の歴史

 オイルショック直後の1980年に、初めて省エネ基準が制定され、外皮の断熱性の目安が示された。これが現在、「等級2」と呼ばれる断熱レベルである。6地域(東京や大阪)であればグラスウール35mm、窓はアルミサッシに1枚ガラスという最低レベルの仕様であるが、当時は「温暖地に断熱は不要」とされた時代なので、まずは「断熱することに意義があった」と言える。

 省エネ基準はその後2回にわたって強化され、91年に等級3、99年に等級4が制定された。等級4ではかなり断熱が強化され、UA値の基準は等級2の半分程度まで減っている。ただし、この省エネ基準に適合義務はなく、努力目標でしかなかった。ゆえに現状の新築住宅においても、等級3程度が相当数あると噂されている……。

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