型枠を使わずに有機的な形状のセメント系構造物を製作できる、建設用3Dプリンター。現場を「工場」に変える力を持つだけでなく、これまで施工が難しかった新しい構造や形状を具現化する可能性を秘めている。海外に比べて出遅れている日本でも、建設用3Dプリンターの導入や開発の動きが出てきた。国内外の現状と展望に迫る。

 繊維大手のクラボウ(大阪市)が、建設産業向けのセメント系材料を使った3Dプリンティングの事業化を検討している。2019年度内にも専用機材を国内工場に導入する方針。意匠性が高い建物の外装材や景観材料など、付加価値が高いセメント系製品の領域で市場展開を狙う。

 クラボウは17年秋に、フランスでセメント系材料の3Dプリンティングを手掛けるスタートアップ企業、XtreeE(エクストリー)と提携。エクストリーの工場と機材を使い、日本で展示する試作品の製造を進めている〔写真1〕。

〔写真1〕高さ4mの建造物を3Dプリンターで築造
フランス南部の都市エクス・アン・プロバンスに位置する中学校の運動場に設けた、屋根を支える高さ約4mの構造物。エクストリーの3Dプリンターでつくった(写真:仏エクストリー)
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 エクストリーは16年の創業。独自開発した3Dプリンティング技術で、高さ4mの支柱や大型のパビリオンなどを築いた実績を持つ。欧州で最大手の建設会社バンシ(フランス)やセメント大手のラファージュホルシム(スイス)、ABB(スイス)、ダッソー・システムズ(フランス)といった大企業と次々に提携。現在も3Dプリンターを使った複数の建設プロジェクトを進めている〔図1〕。

〔図1〕欲しいときに欲しいデザインの部材を調達する基盤を構築
XtreeE(エクストリー)は、3Dプリンターデータの統合プラットフォーム構築の将来構想を描いている。設計者や資材メーカーとのやり取りを1つのサービスに集約し、顧客が欲しいときに欲しい形の3Dプリンター製の部材を調達できる体制を目指す(資料:日経コンストラクション)
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 エクストリーはラファージュホルシムから、3Dプリンティング専用の特殊なモルタルの提供を受ける。3Dプリンターならではのデザイン提案に力を入れ、高品質と意匠性を兼ね備えた技術力を強みとする〔写真2〕。

〔写真2〕型枠不要でデザインの自由度を上げる
薄いモルタルの層を重ねて施工していき、立体的な流線形や表層の細かな凹凸を再現する(写真:日経コンストラクション)
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数年で5億円市場へ

 クラボウは1970年代に、建材の販売を始めた。これまで建物の外装材や断熱材の製造と販売を中心に、事業を展開してきた実績がある。

 だが少子化などの影響で、国内における新設住宅の着工戸数は落ち込む可能性が高い。長期的には建材需要の低下が見込まれる。

 一方で、住宅取得者のニーズや好みの多様化が進み、建材市場は多品種少量生産への切り替えを迫られている。クラボウ化成品事業部技術統括部の平山貴之部長は「顧客のさまざまな要望に応じて、効率よく製品をカスタマイズしていく必要がある」と打ち明ける。

 クラボウは従来のプレキャスト技術に比べて、デザインの自由度が高い3Dプリンター技術を先行して取り入れ、こうした先行きの状況への対応を強化する。平山部長は建設資材分野における3Dプリンター活用の市場が、今後数年で「5億円規模に成長する」と見込む。

 エクストリーから購入する機材の価格は公表していないが、建設用3Dプリンターの上位機種の相場である1億円近くになるとみられる。

 当面、モルタルはラファージュホルシムから輸入する計画で、コスト負担が大きい。そこで将来は、国産のセメント系材料の開発や、セメント系ではない無機系の新材料の利用も視野に入れているという。

 クラボウがフランスで試作するのは、住宅の門塀などだ。曲線形状や表面の模様、スリットの挿入といった面で、施工精度を確認している。近く日本で試作品の展示を始める計画で、顧客の開拓に結び付けたい考えである。

 次ページからは、国内外で開発や利用が加速している、建設用3Dプリンターを巡る最新の技術動向を見ていこう。

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