江戸時代から大阪・御堂筋に店を構える大丸が、戦前に完成したW.M.ヴォーリズ設計の本館を建て替えた。御堂筋側外壁を元の位置のまま保存しつつ、内側をまるごと新築し、構造安全性を確保する離れ業だ。

約12万枚に及ぶ外装タイルを全品調査し、うち約90%を保存している。高層部の外装スクリーンは保存外壁を引き立てるため、保存外壁と同化せずに調和するデザインを目指した。ヴォーリズデザインの特徴を踏まえて新しくデザインした幾何学パターンを反復している。素材は軽量のアルミ鋳物を選択し、自然な色ムラが残る一次電解着色で仕上げた。(写真:生田 将人)
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Before
建て替え前(写真:日経アーキテクチュア)
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 大阪・御堂筋のシンボル的存在である大丸心斎橋店本館が、約3年9カ月に及ぶ建て替え工事を経て、9月20日にオープンした。ウイリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964年)が設計した外壁の一部を同位置で保存し、地下3階・地上11階建ての新本館を建設した〔写真1〕。解体に当たっては1254の内装パーツを保存。1階を中心に、装飾金物などを再利用している〔写真2〕。

〔写真1〕南北の4スパンまで保存
本館南面、清水通り側見上げ。左側が1932年の第3期工事から残っているとみられる外壁。新しい外壁も、これになじむ3層構成とした(写真:生田 将人)
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全体配置図(資料:竹中工務店)
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〔写真2〕装飾金物を再利用し、シャンデリアは復元
装飾天井のスパンは建て替え前(下の写真)より2.5m広い。そのため梁型の装飾金物は再利用では足りず、新しく制作した。シャンデリアは創建時の写真を元に復元したもの。照明はすべてLED(写真:生田 将人)
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Before
(写真:日経アーキテクチュア)
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 大丸がこの地に店を開いたのは江戸中期の1726年に遡る。近代的な百貨店としてヴォーリズが最初に建てた木造洋館(1913年)は1920年に火事で焼失。その後、22年から33年まで、4期に分けて鉄筋コンクリート造の旧本館が建設された〔図1〕。45年3月の戦災で5階以上を焼失し、戦後の復旧で8階まで増築。その後も20回以上増築を繰り返してきた。

〔図1〕増築でも残ったオリジナル外壁を保存
配置・1階平面図。旧本館は4期でいったん完成するが、その後も増築を繰り返した。オリジナル部分を保存(資料:日建設計)
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Before
配置・1階平面図(資料:竹中工務店)
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 基本設計を手掛けた日建設計設計部門ダイレクターアーキテクトの岡田泰典氏は、「耐震補強も検討したが、売り場に耐震壁が大きく出る上、防災設備などの整備も難しかった」と振り返る。大丸松坂屋百貨店と親会社のJ.フロントリテイリングは、2015年7月に建て替えを発表した。

 両社はヴォーリズ建築継承のため、学識経験者による保存検討委員会を組織し、基本設計中の15年から竣工直前の19年8月まで合計16回、保存や復元の方針を議論している。これを踏まえ、御堂筋側外壁と、これに続く南北4スパンの現地保存を決めた。1階が石、中間階がタイル、最上階が擬石張りの3層構成になったネオ・ゴシック様式で、ヴォーリズ設計の戦前の全体像をとどめ、歴史的価値が高いといわれる

 工事では、保存外壁が自立するよう、いったん外周2ブロックを残して解体し、新本館の鉄骨を7階レベルまで組んでから、順次、保存外壁に接続する手順を踏んだ(外壁保存の詳細は「Pickup Detail」)。

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