分譲住宅売買を巡り、消費者契約法に基づいて買い主側からの契約取り消しを認めた、異例の判決が下った。問題となった事象は緑化率不足という条例違反で、容易に是正可能なものだった。(日経アーキテクチュア)

庭に大きなウッドデッキを配置した建売住宅が、実は緑化率不足となっていたことが引き渡し後に判明した。着工前に策定した緑化計画では芝生を植えるはずだった位置をデッキで潰していたためだ。原告の買い主は、売り主の不動産販売会社が「知っていたのに故意に告げなかった」のは消費者契約法違反だと強く主張した
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 契約を判断するための重要事項について、事業者が消費者の不利益となると知りながら故意に告げず、消費者が誤認したまま契約の意思表示をしたとき、消費者は後に意思表示を取り消すことができる。消費者契約法4条2項の規定だ。

 今回は新築分譲住宅の売買を巡り、名古屋高等裁判所がこの規定を理由として契約を取り消した判決を取り上げる。かなり異例の判断だ。

 概要から説明しよう。原告は分譲住宅の購入者で、被告(被控訴人)は主に分譲住宅の販売を手掛ける不動産会社だ。原告は名古屋市に立つ戸建て住宅を被告から約1億円で購入したが、入居後、この住宅では第三者の建築士の指摘により、敷地が名古屋市風致地区内建築等規制条例の定める緑化率を満たしていなかったことが判明した。

 被告はいったん市に提出した緑化計画通りに芝生を植えて完了届を提出。その後、芝生を撤去して1階居室からつながるデッキテラスを設置し、広々とした空間構成をセールスポイントとして押し出していた。一方、デッキテラスの設置により緑化面積は減った。条例は緑化率30%以上とすることを義務付けていたが、それに27.2m2足りない状態となっていた。

 原告は条例違反を理由として被告に契約取り消しを申し入れ、最終的には瑕疵担保責任に基づく契約解除、消費者契約法4条2項に基づく契約取り消しなどを求めて名古屋地方裁判所に提訴した〔図1〕。

〔図1〕いったん芝生を植えて完了届提出後に撤去していた
2014年7月 被告の不動産販売会社が名古屋市風致地区条例に基づく許可を名古屋市へ申請、建築確認申請を実施
2014年12月 住宅が完成。被告は庭一面に芝生を植え、名古屋市へ許可行為の完了届を提出した。被告はその後、芝生を撤去してデッキテラスを設置した
2015年1月 物件売り出しから約1カ月後、原告が問題の住宅を気に入って購入した。売買代金は約1億円だった
2015年3月 原告が入居
2015年5月 緑化率不足について、原告が第三者の一級建築士から指摘を受ける。原告は弁護士に相談し、被告に対して代金返還などを請求。被告が応じなかったため、名古屋地方裁判所へ提訴した
2017年3月22日 1審判決。原告の訴えをすべて退けた
2018年5月30日 2審判決。被告が故意に条例違反を告知しなかったことを理由に、消費者契約法4条2項に基づく契約取り消しを認めた。被告側は上告したが最高裁判所は訴えを棄却した
問題の住宅は1階居間に連続する屋外のウッドデッキがセールスポイントだった。だがこのデッキは、いったん芝生を植えて風致地区条例をクリアし、その後に芝生を撤去して設置されていた(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)

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