設計の指定より安価な仕様で建物が完成したトラブルで、監理者と施工者に連帯して撤去・補修費を含む損害賠償を命じる判決が下った。過去の裁判では本来の仕様との差額返還が主で、今回の判決は異例だ。(日経アーキテクチュア)

富山市で完成した賃貸マンションに多数の瑕疵が見つかった。屋根防水の仕様が落とされ、御影石張りだったはずの壁はタイル張りになっていた。発注者が監理者と施工者を訴えた裁判で、1審、2審は撤去・補修費を含む高額賠償を被告側に命じた
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 施工者が設計図書の指定より低い等級の仕上げを採用、それが後に明るみに出たというトラブルは数多い。今回取り上げる判決はその1つで、筆者自身が発注者側の代理人を務めた裁判を巡るものだ。事件を担当した弁護士として解説したい。

 概要から説明しよう。問題となったのは富山市で2009年6月に完成した鉄筋コンクリート(RC)造・6階建ての賃貸マンションだ。原告となった発注者は、08年4月に敷地を取得、設計事務所A社に設計・工事監理を委託した。報酬は735万円だ。施工者は入札で一番安い金額を提示した建設会社B社。工事代金は約2億3000万円だった。

 引き渡し後、マンションでは多数の施工瑕疵(かし)が見つかった。原告は14年10月、設計事務所A社と建設会社B社の2社を相手取り、補修費などの損害賠償として約2億円を求めて富山地方裁判所へ提訴。2社は全面的に争った〔図1〕。

2008年3月 原告と被告の設計事務所A社が設計・工事監理委託契約を締結
2008年4月 被告の建設会社B社を介し、原告が敷地を取得。土地代は約5400万円だった
2008年7月 設計が完了し、施工者がB社に決定する。B社が入札で最も低い見積もりを提示した。A社が確認申請を実施した後、原告とB社が建築工事請負契約を締結
2008年10月 富山市が確認済み証を交付。構造計算適合性判定機関の指摘により外壁仕様の変更などを余儀なくされ、発注者は追加費用約300万円を支払った
2009年6月 マンションが完成、原告に引き渡された
2014年10月 多数の施工瑕疵などが見つかり、原告は訴外解決を断念。2社を相手取り富山地方裁判所へ提訴
2018年3月28日 1審判決。富山地裁はA社とB社に連帯して約1億3000万円を支払うよう命じた。2社は控訴
2019年3月27日 2審判決。名古屋高等裁判所は2社に連帯して約7610万円を支払うよう命じた。原告、被告とも上告せず、判決は確定した
〔図1〕土地仕入れから関与した建設会社が最安値で受注
施工瑕疵やグレードダウンが問題となった施工者は、入札で最も安い見積もりを提示した建設会社B社だった。B社は土地仕入れの段階から計画に関与していて、設計事務所A社とも長い付き合いだったとみられる (資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)

 裁判では複数の争点が争われたが、なかでも建設会社B社が設計図書の仕様から勝手にグレードダウンしていた点が問題になった。

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