工事代金1億円超の高級住宅の新築工事を巡り、建て主である発注者の怒りが爆発した。現場の養生が不十分だったのを見とがめ、建設会社の現場監督や作業者に工事中断を命じたのだ。そのまま工事が再開できないまま数カ月が経過、発注者は建設会社を相手取り、債務不履行を理由とした契約解除と損害賠償を求めて提訴した
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不満を募らせた発注者が現場から施工者を追い出し、工事中断に発展した。お互いに「相手の責任だ」と主張して訴え合った訴訟で、裁判所は施工者に逸失利益の請求を認めた。トラブル清算のポイントは何か。(日経アーキテクチュア)

 建築工事請負契約が中途終了する場合、その法的関係は難解だ。

 今回取り上げる判決は、発注者と施工者の争いで工事が中断、そのまま物別れの格好で仕事を進められなくなったトラブルで、その清算が裁判で争われたケースだ。

 まず概要から見ていこう。

 発注者は自宅として東京都豊島区の敷地に戸建て住宅の新築を計画、2013年3月に施工者の建設会社と建築工事請負契約を締結した。工事代金は約1億6000万円、引き渡し日は14年5月末という契約だ。設計は訴外の設計事務所が手掛けた。

 施工者は契約通りに着工し、14年3月の時点では外壁工事や電気設備工事が完了、フロア張りなどの大工工事を進めていた。発注者はこの時点までに着手金や上棟時の中間金など約1億2700万円を支払った。

 トラブルとなったのは14年3月28日のことだ。現場がある東京都では2月から3月にかけて降雪があり、その際、現場の屋内に雪が吹き込んで積もっていたのを発注者が見とがめた。それに端を発した言い争いが激化。発注者は工事の即時中断を強硬に要求し、建設会社の現場監督らを現場から追い出した。

 現場はそのまま止まってしまった。発注者は同7月、中断時点で工事は遅れていたと主張し、債務不履行を理由とした契約解除を施工者へ通告。さらに14年8月、建設会社を相手取り、約7700万円の返還を求めて東京地方裁判所へ提訴した。発注者は現場の出来高は約5000万円にすぎず、過払い分は返還されるべきだと主張した。

 一方の建設会社は「工事は債務不履行状態にはなく、発注者の自己都合による解除に当たる」と反論し、逸失利益として約880万円の損害賠償を求めて反訴した。

 さらに予備的主張として、解除が認められないとしても「注文者の責めに帰すべき事由」により工事契約は履行不能の状態にあると主張。この場合の損害額は約870万円だと主張した〔図1〕。

2013年 3月 発注者と建設会社が建築工事請負契約を締結。代金は約1億6000万円で、引き渡し予定日は14年5月末。建設会社は工事に着手
2014年 3月28日 新築現場の屋内に雪が吹き込んで積もっていたのを発注者が見とがめ、作業者や現場監督に工事現場から退去するよう命じた。工事は外壁工事などが完了し内部造作の段階にあったが、そのまま中断した。発注者は別の事業者に工事を引き継がせ、建設会社は引き継ぎの協議に応じた
2014年 7月 住宅が完成。発注者は建設会社に債務不履行があるとして契約解除を通告
2014年 8月 発注者が東京地方裁判所に申し立て、建設会社のメイン口座について仮差し押さえを執行。また約7700万円の返還を求めて提訴した
2014年 11月 建設会社側の異議申し立てにより、東京地裁が発注者による仮差し押さえに関する決定を取り消し
2015年 11月 東京地裁が本件を調停に付す決定を下す
2017年 11月 東京地裁が本件について「双方債務なし」とする決定を下す。発注者と建設会社の双方が異議を申し立て、調停は成立しなかった
2018年 6月20日 1審判決。東京地裁は発注者側に帰責事由のある工事中断と見なし、建設会社の見積もりのうち粗利益分を賠償するよう発注者に命じた
〔図1〕責任のなすりつけ合いに
不満を募らせた発注者が現場養生の不備を見とがめ、建設会社側を現場から追い出してしまった。東京地裁は調停で「双方債務なし」という和解案を提示したが、両者とも納得しなかった(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)

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