発注者が施工者の選定に苦慮している。旺盛な建設需要を背景に、建設会社が選別受注を強化しているからだ。空前の「売り手市場」で工事を引き受けてもらうための打開策が、入札・契約方式の見直しだ。(日経アーキテクチュア)

 建設現場は2020年の東京五輪などに向けてフル稼働状態だ。手持ち工事量が潤沢な建設会社は人手不足を背景に、価格勝負の単純な競争入札案件を敬遠し、民間・公共を問わず選別受注を徹底している。

 例えば、国土交通省関東地方整備局が18年度に実施した建築工事の入札では、77件のうち合計41件で参加者が集まらない「不調」あるいは入札価格が予定価格を上回る「不落」となった。不調・不落の発生率が53.2%に達する異常事態だ。

 建設会社が単純な価格競争を敬遠する一因に、費用・時間の問題がある。積算や営業に相応の費用がかかる上、必ずしも落札できるとは限らないからだ。入札参加に伴う建設会社の負担がどれほどか、簡単な試算をしてみよう。

公共だけで5000カ月が無駄に

 まずは公共。国交省の建築着工統計によると18年の公共建築(非住宅)の着工数は国内に約1万棟だ。これら全ての案件で、一般競争入札によって受注者を決めたとする。

 また、1件の入札に平均4者が応札すると仮定する(3者が落札できない)。さらに応札者がそれぞれ400万円の経費を投じたとすると、「失注」した建設会社の費用負担は、全国で年間合計1200億円に上る。

 続いて民間建築。18年の着工数は約7万2000棟だ。民間では特命随意契約も多いので、競争入札を全体の6割とする。1件当たり3者が応札すると仮定して(2者が失注する)、それぞれが応札に際して400万円の経費を投じたとすると、失注した建設会社の費用負担は合計3456億円だ。18年は公共・民間工事で合計4600億円超が泡と消えた計算になる。

 施工者がなかなか決まらないと、発注者の負担も増大する。調達手続きをやり直す費用がかかるし、工期は後ろ倒しになってしまう。

 公共建築1万棟の入札において、不調・不落率を平均25%、再入札に要する経費を1件当たり100万円とすると、全国で25億円が追加で必要になる。再入札による工期の遅れを1件当たり約2カ月とすると、実に5000カ月もの時間が無駄になる。

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