「1階にビルトイン式の車庫を設けたい」。建て主がそう要望したらどうするか。普通なら開口部を門形フレームにするところだが、計算が複雑でコストがかかる。ここで紹介するのは、もっと手軽に大開口を実現する方法だ。

 都心の住宅密集地に3階建て住宅を建てる際、建て主から1階にビルトイン式の車庫の設置を求められることがある。その場合、道路側の面はほとんど壁を確保できない「一面開口」になる。過去の大地震では、こうしたプランで倒壊例が続出。従来から危険性が指摘されているプランだ。

 木造住宅用金物メーカーのBXカネシン(東京都葛飾区)は、2018年4月、基礎と450mm幅の耐力壁を緊結する柱脚金物「ベースセッター」を発売した。450mm幅の壁材に、広く流通している梁材を使用することで、約5倍の壁倍率を確保している。一般的な幅910mmの耐力壁よりも、開口部の左右に生じる出っ張りを抑えることが可能。狭小敷地の1階に大開口の車庫を設ける場合に、うってつけの製品だ。

 導入例を見てみよう。東京都荒川区の3階建て住宅の1階に設けた例だ〔写真1〕。この住宅は、間口5m、奥行き15mの狭小敷地に立つ。限られた敷地にビルトイン式の車庫と幅1.5mの玄関アプローチを設ける必要があった。そこで、正面右手の外壁1階部分に、幅450mmの耐力壁を間口と平行に5枚並べた〔図1〕。

〔写真1〕幅450mmの耐力壁を5枚並べて大開口を実現
東京都江戸川区の住宅会社、田中工務店が2019年8月、東京都荒川区に完成させた3階建ての木造住宅。1階にビルトイン式の車庫を設けるために、道路側に大開口を設ける必要があった。そこで、同社はBXカネシンの「ベースセッター」を採用。開口部の一方の端部に幅450mmの耐力壁を間口と平行に5枚並べた。耐力壁は柱脚金物で基礎と緊結する(写真:左は田中工務店、右は日経ホームビルダー)
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〔図1〕敷地幅5mから幅3.6mの開口部を確保
この住宅の土台伏せ図(右側が開口部)。間口5m、奥行き15mの狭小敷地にビルトイン式の車庫と玄関アプローチを設ける必要があった。間口の柱のスパンは約4.1m。幅450mmの耐力壁を設けると、残りの幅約3.6mを開口部として確保できる。この開口部を車庫と玄関アプローチとして利用する(資料:田中工務店の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 設計・施工を手掛けた田中工務店(東京都江戸川区)の田中健司社長は「大きな開口を取りながら、耐震等級3をどう確保するか。その解決策としてベースセッターの導入を決めた」と振り返る。

門形フレームより50万円安い

 狭小敷地で大開口を確保するには、開口部を門形フレームとするのが一般的だ。

 門形フレームは柱と梁の接合部を剛接合で一体化したもので、その構造計算は複雑だ〔図2〕。まず、部材のたわみ角などを求め、それを基に柱や梁に生じるモーメントを算出。そこから各部材の応力を計算し、許容応力に収まるように部材を設計する。

〔図2〕門形フレームの導入より50万円安い
門形フレームは、柱と梁を剛接合で一体化するので構造計算が複雑。一方、ベースセッターは柱と梁の接合部をピン接合として扱うので、計算が単純になる。田中社長の試算によると、門形フレームの採用よりも材工込みで約50万円安くなったという(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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 門形フレームを導入する際は、構造計算事務所やプレカット会社にこうした解析を委託するのが普通だ。具体的な解析手法は手掛ける会社によってまちまちで、内容を公開していないところも多い。住宅会社にとっては計算が難しいうえ、コストアップの要因になりかねない。

 一方、ベースセッターでは、柱と梁の接合部を剛接合ではなく、ピン接合として扱う。ピン接合は計算上、接合部のモーメントを0とするので、構造計算が簡単になる。市販の許容応力度ソフトとBXカネシンが無償提供するチェック用のエクセルファイルを用いるだけで、一般的な在来木造住宅並みの手間で安全性を確保できる。

 田中工務店の田中社長は設計段階で、門形フレームを導入する場合とベースセッターを採用する場合とで大まかなコスト比較を実施した。その結果、開口部まわりの工事は、ベースセッターを使う方が材工費込みで約50万円安かった。

 「構造計算だけでなく施工も楽だった。注意すべき点は、柱脚金物のアンカーボルトと基礎内の鉄筋が干渉しないように、配筋の時点で正確に位置決めすること〔写真2〕。その点さえ注意すれば、あとはさほど難しいところはなかった」(田中社長)

〔写真2〕基礎の鉄筋とアンカーボルトのぶつかりに注意
ベースセッター用の基礎を施工している様子。型枠内部の鉄筋を組み終わり、柱脚金物のアンカーボルトを建て込んでいる(写真:田中工務店)
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アンカーボルトの設置が終わったところ(写真:田中工務店)
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基礎が完成した状態(写真:田中工務店)
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室内側から1階の開口部を見たところ。左側にベースセッターによる耐力壁を並べているが、右側は105mm角の柱を設けただけだ(写真:田中工務店)
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