高断熱住宅に設置された全館空調での温熱トラブル事例と、空調ダクトにほこりやカビ、表面結露が発生した事例を紹介する。ダクトの不具合は室内の空気質汚染や木材の劣化につながるので軽視できない。

 「主寝室が寒くて、リビングは足元がスースーする」。住宅の温熱トラブルに詳しい住まい環境プランニング(岩手県盛岡市)の昆寛技術顧問は、寒冷地に立つ築10年以内の高断熱住宅の建て主から、このような不満の原因調査を頼まれた。元請けの住宅会社は、「施工にミスはない」と主張していた。

 この住宅は平屋建てで、小屋裏と床下に設置した計2台のエアコンの暖気をダクトで床下に送り、壁の通気層から暖気を吹き出す全館空調を採用していた〔図1写真1〕。冬に測定した主寝室の1カ月間の平均温度は22.6℃。冬の一般的な快適温度と言われる18~22℃台は保っていた。リビングの平均温度は24.2℃で、主寝室との温度差はわずか1.6℃だった。

〔図1〕エアコン2台で床下を暖める
住まい環境プランニングが調査を頼まれた住宅で採用していた全館空調の仕組みを示した断面図。小屋裏エアコンの暖気はダクトの途中に設けたファンで主寝室などの床下に、床下エアコンの暖気はエアコン自体のファンでリビングの床下に送っていた
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床下に設置していたエアコンとダクトの位置関係
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(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
〔写真1〕リビングは床下エアコンで暖める
床下に設置したエアコン
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エアコンからの暖気を集める引き込み口。ここからリビングの床下につながるダクト経由で、暖気を送っている
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(写真:住まい環境プランニング)

 断熱材と気密材の施工状況に欠損箇所は確認されず、C値(相当隙間面積)も0.15cm2/m2と小さかった。しかし、赤外線カメラによる調査では2つの問題が発見された。

 1つは床下の温度むらだ。主寝室の床下にダクトの暖気が吹き出す付近の温度は、リビングの床下よりも6.2℃低かった〔写真2〕。さらに、主寝室の床下内でも、吹き出し口の付近と少し離れた箇所で3.1℃の温度差が生じていた。昆技術顧問は「主寝室の床下につながるダクトが長い点や、吹き出し口からの距離の違いなどが、温度むらの原因だ」と話す。

〔写真2〕吹き出し口に6.2℃の温度差
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赤外線カメラで撮影した、主寝室(左)とリビング(右)に設置された床下からの吹き出し口付近の様子。主寝室のダクト内温度は26.9℃、リビングは33.1℃で、6.2℃の温度差が生じていた(写真:住まい環境プランニング)

 もう1つの問題は、床下の暖気が壁の通気層に流れていない箇所が見つかったこと。床下と主寝室の壁の通気層をつなぐ経路に、現場発泡ウレタンが被さっていた〔写真3〕。主寝室の給気ガラリの表面温度は15.4℃と低い状態だった。

〔写真3〕断熱材が通気経路に被さる
床下と主寝室の壁の通気層をつなぐ経路に、基礎に吹き付けられた現場発泡ウレタンが被さり、通気層内に暖気を送るための経路がふさがっていた(写真:住まい環境プランニング)
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 リビングで足元がスースーしたのは、窓の付近で冷たい空気が下方向に流れるコールドドラフト現象が起きたからだ。窓は樹脂枠のトリプルガラスを使用していたが、赤外線カメラで冷気の流れを確認できた。

 昆技術顧問は「床下の温度むらと窓のコールドドラフト現象が原因で、建て主は寒さを感じていた。エアコンによる全館空調で室温の温度差を小さくしただけでは、解決が難しい問題だ」と話す。

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