
なぜ、Eタイプ(JIO仕様)がDタイプ(フラット35仕様)よりも防水性能が高かったのでしょう。
石川 Eタイプは、両面防水テープが下地木材と密着しています。両面防水テープは十分な密着性を備えているので、ビス穴の周辺には水が回りにくいと考えられます。
一方、Dタイプは下地木材に透湿防水シートを2枚重ねています。シートには密着性がないうえ、下穴を開ける際に木くずが間に入り込んで下地木材から浮いた状態になります。このため、ビス周りからの浸水が、シートと木材の間に広がったとみています。
しかし、Dタイプの上方にも、金具の下に両面防水テープを貼っています。この両面防水テープは、効いていないのでしょうか。
石川 そこをどう考えるか、難しいところですね。これはまだ仮説の域を出ませんが、金具と両面防水テープを密着させるのは、防水上良くないのかもしれません。そう考えた根拠は、片面防水テープを使ったCの方が、Dより好成績だったからです。Cの防水テープは、下面の防水紙と密着しているだけで、上面の金具とは密着していません。意外なことにCの方が漏水が少なかった。
なぜ、金具と防水テープを密着させると良くないのか。そもそも金具は金属なので平滑性が高い。そこに防水テープを貼ると、テープは貼り付いた面では金具に強く拘束されるのに、貼り付いていない金具の穴底部分だけが動く状態になります。その状態でビスを打つと、ビスが周りのテープを巻き込んで密着を切れやすくします。
それに対して、Eでは防水テープが下地木材に密着して拘束されているので、ビス穴周りでも動きにくい。そのおかげで、Eは十分なくぎ穴止水性を発揮できたのかもしれません。
これまで住宅業界では、手すり壁の納まりは、両側から透湿防水シートを折り重ねるのがセオリーとされてきました。今回の実験結果は、その常識を覆すものですね。
石川 防水紙の重ね張りが大切というのは、一種の神話だったということですね。今回の実験と、5年前に私たちが手掛けた実験(次記事「5年前の同様の実験を参考に」参照)を総合すると、Dタイプに代表される「両側からの防水紙の重ね張り」よりも、Eタイプの「下地木材に防水テープを貼る方法」のほうが、防水性能では優れた結果を出しました。
現場の作業性においても、Eタイプは作業しやすいうえに手数が少ない。一方、Dタイプでは、両面防水テープに金具を設置する際、位置決めの修正をしづらいという問題があります。施工性も含め、Eタイプの優位性は動かないと思います。
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