雨掛かりや雨水浸入があった住宅で、夏型結露はどのように発生するのか――。再現するため、日経ホームビルダーは専門家の力を借りて独自実験を実施した。仕様を変えた4種の試験体で防止効果も探った。

実験の目的と方法
壁内で生じる現象を試験体で「見える化」

 「木造建築で繊維系断熱材を採用する際に、冬型結露対策として設置する防湿シートは、温暖地では夏型結露を招く原因になる」。結露問題に詳しい土屋喬雄・東洋大学名誉教授ら複数の研究者が、1980年代後半から指摘していた問題だ。だが一方で土屋名誉教授らは当時、健全な建物仕様を前提にしたシミュレーションなどを通じて「過度に懸念する必要はない」と結論付けた。この考え方が今日の通説だ。

 他方、近年では夏型結露で木造住宅の壁内にカビの繁殖や木材の腐朽が生じるトラブル例が、各地で見つかっている。多くは、建築中の雨掛かりや完成後の雨水浸入などで、壁内の合板が一定以上の水を含んでいたことが原因とみられる。前章の事例も同タイプで、通説の根拠になったかつての研究で想定していなかった原因によるトラブルだ。

 日経ホームビルダーは、夏型結露の再現実験を企画。土屋名誉教授を監修役に、結露トラブルに関する調査を多数手掛ける神清(愛知県半田市)に実験施設の提供と実大試験体の作成、測定作業などの協力を依頼した〔写真1〕。

〔写真1〕実験施設で実施
実験の監修役である土屋喬雄・東洋大学名誉教授(右)と、試験体作成と実験作業を依頼した神清の神谷昭範常務(中央)、盛田裕紀課長(左)。奥に見える建物が、神清の実験施設(写真:日経ホームビルダー)
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条件は「外気より室温が低い」

 前章で触れたように、夏型結露のメカニズムは次のとおり。「日射で外壁や屋根が温まり、住宅外皮を構成する合板などの多孔質な建材が、含んでいた水分を放出。室温が屋外や壁内の露点温度を下回った環境では、壁内で室内側の面に結露する。外気温が下がり室温の方が高くなる夜間は、結露水が蒸発して建材が再び吸収する」〔図1〕。冷房で室内が冷えがちな夏に生じやすい現象だ。

〔図1〕夏型結露は防湿層裏面(壁内側)で生じる
室温が外気より低い状況で、室内側の防水層が冷やされて結露するのが夏型結露のメカニズムだ(資料:日経ホームビルダー)
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 冬型結露は室内の空気中に含まれる水蒸気が断熱層の屋外側で結露するのに対して、夏型結露は、断熱層の室内側にある防湿層裏面(壁内側)に生じる。このように夏型結露のメカニズムは既に解明されているが、実際に現象を目視できる機会はまずない。それを「見える化」することが、日経ホームビルダーの実験の目的だ。

 実験では神清の施設で、南側の壁体を455mmピッチの間柱で4区画に区切り、各区画ごとに仕様を変えて試験体1~4とした〔写真2〕。

〔写真2〕仕様を変えた4試験体で実験
実験施設の南側外壁を使って試験体を構築。写真は室内側。間柱で区切った4区画を、仕様の異なる試験体にして、温湿度を計測した(写真:日経ホームビルダー)
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 4試験体ともに屋外側から外装材(窯業系サイディング、ベージュ色)、通気層、構造用合板(針葉樹系で厚さ12mm、以下合板)、断熱材(グラスウール24K、厚さ100mm)、防湿層部材という構成は共通だ。

 日中は施設を「冷房で室内を冷やした状態」にして、壁内の温湿度や結露の発生状況などを計測する。日射や内外の温湿度といった条件が同じという設定で、4種の試験体の計測値を比較した。

外壁通気の有無などで比較

 試験体1は、合板にあらかじめ散水して断熱材側(壁内側)表面の初期含水率を40%以上に高めた。通気層は上下を閉じ、壁内の防湿層(室内側)は透明のポリエチレンシートで形成。夏型結露のリスクが最も高い状態を想定した仕様だ。試験体2は、合板に乾燥材を使い、通気層を開放。その他の仕様は試験体1と同じで、「健全な状態」を想定した。

 試験体3は、合板の含水率を1と同程度に高めたうえで、通気層上下を開放した。その他の仕様は1・2と同じ。試験体4は防湿層に「可変透湿気密シート」を採用した。

 可変透湿気密シートは、気密を確保しながら透湿抵抗が温湿環境で変化する建材だ。壁内が高温多湿になると湿気を室内側に逃がし、それ以外の温湿環境では湿気を遮断する。このシート以外、4は3と同じ仕様(合板に含水、通気層は開放)だ。

 各試験体には、防湿層の裏面と合板の断熱材側(いずれも壁内側)、通気層内など、25カ所に温湿度センサーを設置。2019年4月23日から5月中旬までデータを記録した。

 試験体1・3・4で合板を「含水率40%以上」としたのは、土屋名誉教授の助言に基づき、「雨でぬれた状態の含水率」を再現したものだ。

 試験体の組み立て前にシャワーホースで水を掛け、組み立て後も外装材と施設軒天の取り合いから、各試験体に同量を注水〔写真3〕。だが、ここまでのべ6日間かけたが、含水率がなかなか目安値に届かなかった。同種の合板でも吸水傾向に個体差があり、最初は想定以上のばらつきも生じた。最終的に、組み上げた試験体それぞれの合板面に直接、霧吹きで水を噴霧して、均等に含水率の目安値を達成。実験を始めた。

〔写真3〕合板の含水率を上げる
試験体に取り付ける前の合板に、シャワーホースで水を掛けた(写真:日経ホームビルダー)
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その後、組み上げた施設外壁の試験体1・3・4それぞれに、外装材と軒天の取り合いから同量の水を注いだ(写真:日経ホームビルダー)
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