住宅実務者の不用意な一言が依頼者の怒りを呼び、取り返しのつかない事態を招くことがある。ここで紹介するのは、読者アンケートに寄せられた失敗談。誰もが経験しそうな事例ばかりだ。

実例1 「優先順位があるので」

(イラスト:勝田 登司夫)
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 「昨年秋の台風の影響で屋根や外壁の補修工事が急増し、その対応に追われるなかで、依頼者に失礼なことを言ってしまった」

 今回、日経ホームビルダー読者を対象にしたアンケート調査で、近畿地方の住宅会社やリフォーム工事会社から、そのような失敗談が複数寄せられた。昨年秋の台風とは、2018年9月4日から5日にかけて近畿地方で猛威をふるった台風21号のことだ。

 記録的な暴風雨が襲った近畿地方では、屋根の飛散事故が続出〔写真1〕。住宅でも外壁やカーポートなどの損壊事故が相次いだ。修理工事の依頼が殺到した住宅会社やリフォーム工事会社では、全ての注文に対応しきれず、多数の依頼者を待たせることになった。

〔写真1〕工場の屋根が戸建て住宅を直撃
18年9月の台風21号は近畿地方に大きな爪痕を残した。堺市では工場の金属屋根が、近隣の住宅まで飛んだ。近畿地方の住宅会社は、現在も補修工事に追われている(写真:日経 xTECH)
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 ここで紹介するのは、京都府の住宅会社に勤務するA氏が、多忙を極めるなかで順番待ちの依頼者に、つい口にしてしまった失言だ。

「上客を優先」と誤解

 台風襲来から2カ月ほど経った18年11月頃、職人と打ち合わせを終えて車に戻ろうとするA氏に、近隣に住む別の依頼者が声をかけた。「近所ではもう何軒も修繕が終わっている。うちのカーポートはいつ直してくれるんだ」

 それまで、毎日のようにこうしたクレームを受けていたA氏は内心「またか」とうんざりしながら、「すみません。なにせ、台風の影響で補修工事が立て込んでおりまして…。修理には優先順位があるものですから」と釈明した。

 その瞬間、依頼者の顔色がサッと変わった。「客に優先順位を付けるとは何事だ。上客は優先してうちは後回しにするのか」

 すぐに「誤解されてしまった」と気付いて謝罪したが、依頼者の怒りはおさまらない。だからと言って、この依頼者の要望を特別に受け入れて補修の予定を変更すれば、今度は別の依頼者に迷惑が及んでしまう。

 A氏はその場で冷静に振り返り、「優先順位」という言葉が誤解を招いた理由を考えた。

 この依頼者は、A氏に初めて工事を発注した顧客だった。そのため、A氏の発言を「上客ばかりを優先して、初めての顧客を後回しにしている」と受け取ったのだ。

 A氏が伝えたかったのは、生活再建を図るうえで緊急性が高い住宅を優先しているということだった。屋根が飛散した住宅では、雨露をしのぐことさえままならない。だから「優先順位」という言葉を使ったのだ。

 そう伝えると、依頼者は意外とすんなり矛を収めた。依頼者の変化を見て、A氏は「自分の説明が言葉足らずだった」と反省した。

「最初に断るべきだったかも」

 大阪府のリフォーム工事会社で営業を担当するB氏も、補修工事の順番待ちの依頼者からのクレームに現在も苦慮している。

 B氏の会社では、19年3月末の時点で、まだ着手できていない瓦屋根の補修工事を多数抱えている。ほかにも外壁や外構部の修理も残っている。しびれを切らした依頼者のなかには、工事のキャンセルや着手金の返金を求める人もいる。それらの要望には全て応じているという。

 B氏は「長期間待たされている依頼者は、相当ストレスをため込んでいる。そのため、こちらのちょっとした一言に過剰に反応し、すぐに解約や返金を持ち出してくる」と嘆く。

 B氏によると、府内の住宅会社やリフォーム工事会社の中には、補修工事が急増した18年秋の時点で、消費者からの修理依頼を断る会社もあったという。

 しかしB氏の会社では、なるべく依頼に広く応じる方針で対応した。台風の被害に困っている人の要望には、なるべく応えたいとの思いがあったからだ。

 「今振り返ると、昨年秋の時点で自社のキャパを超える依頼を断るほうがよかったかもしれない。仮に、広く要望を受ける方針を採るにしても、待たせている依頼者に定期的に連絡を入れるなど、きめ細かいケアが必要だった。台風被害は、当社に大きな教訓を残した」(B氏)

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