「建築基準法の告示仕様で共同住宅の界壁を設計・施工したが、建基法施行令が規定する遮音性能を現場で確保できない―」。音のクレームを抱えた建築士A氏から日経ホームビルダーにこうした情報提供があり、事情を調べた。

 問題の住宅はメゾネット形式の木造2階建てで、2住戸を配置〔図1〕。一方がオーナー住戸、もう一方が賃貸住戸の築浅住宅だ。賃借人が「2階の書斎や主寝室にいると、オーナー住戸で鳴っている携帯電話の音が聞こえる」と訴えた。オーナーも気にすれば住戸内のどこにいても賃貸側の生活音が聞こえる状況だった。

〔図1〕界壁でオーナー住戸と賃貸住戸を区切る
遮音性能に関するクレームが発生した木造住宅の平面図。同じ間取りのオーナー住戸と賃貸住戸を界壁で区切っている(資料:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]

 住戸間の界壁は、厚さ50mmのグラスウール(24k)を105mm角の柱で構成した壁内に充填し、界壁の両側に厚さ12.5mmの石こうボードを2枚重ねで桁まで張っていた〔図2〕。A氏は「告示1827号を踏まえた仕様で、建基法に適合している」と説明したが、オーナーは納得せず改善を求めた〔図3〕。

〔図2〕告示仕様で界壁を設計
当初設計で採用した界壁回りの断面図。界壁は告示とほぼ同じ仕様だった(資料:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]
建設省告示1827号の第2の2 界壁の厚さが10cm以上で、その内部に厚さ2.5cm以上のグラスウール(20k以上)またはロックウール(40k以上)を張ったもの。さらに、界壁の両側を厚さが1.2cm以上の石こうボードを2枚以上で覆ったものなど
建築基準法施行令第22条の3 法30条の政令で定める技術的基準は、振動数の音に対する透過損失を以下に掲げる数値以上とする。振動数125Hz(低音)の透過損失は28dB 、同500Hz(中音)は40dB、2000Hz(高音)は50dB
〔図3〕基準法は仕様規定と数値規定の2本立て
界壁の遮音性能に関する建基法の規定を抜粋した。告示1827号は施行令22条を満たす界壁の仕様例、施行令22条は部材に求める透過損失値の基準値を示す(資料:日経ホームビルダー)

 A氏は環境測定などを手掛けるB社に、現地での遮音測定を依頼した。B社は賃貸住戸の各部屋で発生させた複数の周波数の音の強さと、オーナー住戸側の同じ部屋で聞こえる音の強さをそれぞれ測り、それらの数値差を「遮音性能」と独自に定義して示した。

 遮音性能が最も小さかったのは書斎で、次いで洋室1、階段の順だった。とりわけ125Hzの音の遮音性能が、どの箇所でも低かった。

 界壁の遮音性能については、建基法施行令22条の3で「透過損失値」(材料固有の遮音性能)を周波数ごとに規定している。この透過損失値と、B社が現地で測定した遮音性能値を比較すると、大半の箇所で後者が下回った。

 A氏は施行令の透過損失値を上回ることを目標に界壁を3度にわたって改修した〔図4〕。1度目の改修はロックウールと硬質石こうボードを追加したが、音問題の改善はごく一部にとどまった〔図5〕。

〔図4〕界壁回りの改修を3度実施
これまでに界壁回りで実施した3度の改修内容を示す。改修箇所を壁だけでなく天井にも広げた(資料:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]
〔図5〕3度目の改修でも施行令を下回る
現地で測定した周波数125Hzの値。2階の書室は3度目の改修後も、施行令22条の基準値を下回った(資料:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]

 2度目は石こうボードを階段のささら桁が貫通しない納め方に改めたほか、間柱と壁下地の接触箇所を減らす(間柱を「千鳥配置」化)など大改修した。改善範囲はかなり広がったが、まだ一部では透過損失値より遮音性能値が低い状態だった。

 3度目は、壁と天井の一部に遮音材と吸音材を追加。この改修でも、書斎だけは125Hzの遮音性能値が透過損失値を下回った。そのため、A氏は日経ホームビルダーに窮状を訴えた。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ホームビルダー」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら