雨漏りの原因を調べると、毛細管現象が浸水の原因になっていることが多い。対策を講じるには、毛細管現象のメカニズムを知ることが欠かせない。(日経ホームビルダー)

 この連載の執筆を始めてから、雨漏り対策セミナーの講師を依頼される機会が増えた。その中で感じるのは、「毛細管現象」を分かりやすく伝えることの難しさだ。

 受講者の大半は、住宅会社の経営者や技術者だ。トラブル事例を写真で紹介すると目を輝かせて聞いてくれる。ところが、雨水の浸入ルートを解説するために、界面張力や毛細管現象の解説を始めると、途端に退屈そうな表情を見せ始める。

 しかし、毛細管現象は住宅の至る所で発生する。住宅実務者にとって避けて通れない問題だ。これを完全に押さえ込むのは至難の業だが、発生するメカニズムを知れば、いくつかの対策が見えてくる。今回は、毛細管現象を基礎から解説する。

小さな隙間に要注意

 毛細管現象による雨漏りのトラブルで、最もよく見かけるのは、透湿防水シートの端部から雨水が浸入するケースだ。写真1は、透湿防水シートとサッシとの取り合い部から浸水した例だ。

〔写真1〕防水紙のシワから毛細管現象で雨水が浸入
木造2階建ての住宅で雨漏りが発生。筆者が外壁を剥がしたところ、透湿防水シートの端部(サッシとの取り合い部)が変色して膨れていた(写真:第一浜名建装)
[画像のクリックで拡大表示]
防水テープの上に透湿防水シートを貼る際、ローラー圧着が不十分だったのでシワができ、隙間から雨水が浸入した(写真:第一浜名建装)
[画像のクリックで拡大表示]

 取り合い部では、サッシ枠のフィン(つば)に両面用の防水テープを貼り、その離型紙を剥がしながら、上から透湿防水シートを貼る。シワができないよう、上からローラーで圧着しながら貼るのが鉄則だ。ところが、圧着が不十分でシワが残ると、隙間から雨水が浸入する恐れがある。この雨水侵入は「毛細管張力」によって引き起こされる。

 毛細管張力とは毛細管現象によって生じる引っ張り力のことで、「接近した2枚の平面に挟まれた水(または非常に細い管の水)が、界面張力により濡れていない方向に引っ張られる力」を指す〔図1〕。ここで出てきた界面張力とは、固体と液体など異なる相の境界面に働く張力のこと。毛細管張力は、隙間を形成する壁や管と、水との間に働く張力と理解すればよい。

力の種類 特徴
重力 地球上の物体に下向きに働いて、重さの原因になる力
表面張力 液体の表層付近で、分子同士が相互に引き合う力。物体は表面のエネルギーを最小にして安定しようとする。表面積が最小の形態は球なので、水滴は球状になる
界面張力 異なる相(固体層、液体層、気体層)の境界面で生じる引き合う力。例えば、水を容器に入れると、壁面近くの水面は壁に引き上げられるように変形する
毛細管張力 非常に接近した2枚の平面に挟まれた水(または非常に細い管の水)が、界面張力により濡れていない方向に引っ張られる力
圧力差による力 空気の圧力差によって働く力。雨仕舞いで問題なのは、隙間の入り口側の圧力が出口側より高い場合だ
〔図1〕住宅のさまざまな部位で発生する毛細管張力
毛細管張力による毛細管現象は、外壁面や屋根面など住宅のさまざまな部位で発生する(資料:第一浜名建装)

 説明だけでは分かりにくいかもしれないが、ストローなど細い管を水中に立てるとよく分かる。水は重力に逆らって管の中を上昇する。ストロー(固体)との間に働く張力によって、水が上方に引っ張られる〔図2〕。

〔図2〕重力に逆らって水が上方に移動
毛細管現象のメカニズムは分かりにくいが、簡単な実験で視覚的に理解できる。上のように、細い管を水中に立てると、毛細管現象で水位が上昇する。管の内径と上昇水位は、反比例の関係にある(資料:第一浜名建装)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ホームビルダー」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら