豊富な雨漏り修理の経験を持つ筆者が、初めて「垂木の腐朽」を経験した。原因は、垂木の表面を塗装したこと。雨水の逃げ場がなくなって内部にたまり、腐朽菌を発生させてしまった。(日経ホームビルダー)

 長年、雨漏り調査を続けている筆者でも、これまでに見たことがない珍しいトラブルに遭遇することがある。ここで紹介するのは、まさにそんな事例の1つだ。

 2018年10月、知り合いの塗装会社から連絡があった。「築40年の2階建て木造住宅の外壁塗装を依頼されたが、垂木や野地板の状況が気になる。見てくれないか」と言う。早速現地に足を運ぶと、腐朽した垂木を発見した〔写真1上〕。

〔写真1〕上部から浸入した雨水が逃げ場を失う
築40年の2階建て木造住宅で外壁塗装を依頼された塗装工事会社が、垂木や桟木の腐朽を発見。筆者に調査を求めてきた(上)。数年前に、建て主に補修を依頼された工事会社が、腐朽部にシーリング材を充填していたものの、これは逆効果だった(写真:第一浜名建装)
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塗膜が水の逃げ場を塞ぐ

 ご存知のように、垂木は屋根板(野地板)の下に並べる角材のことだ。通常の垂木は、側面や下面が空気に触れているので、水を含んでもしばらくすれば乾燥する。腐朽することはまずあり得ない。

 ところが、この住宅では垂木の側面や下面を塗装していた。

 建て主によると、過去の塗り替え工事の際に、工事会社が「全部きれいに塗っておきますから」と言って垂木を塗装してくれたという。しかし、塗装できるのは外から見える部分だけだ。垂木や桟木、野地板が接している部分までは塗装できない。

 垂木や桟木が痩せると、その隙間から雨水が吸い込まれることがある。木材の内部に浸入した水分は、塗膜によって逃げ道を塞がれているので、中にたまってしまう。滞留した水分は日差しによる温度上昇で周囲に広がり、腐朽菌が活発に活動する。

 さらに、10年前に建て主が別の塗装工事会社に塗り替えを依頼した時、工事担当者は「傷んだ所を直しておきましょう」と言って、腐朽した垂木にシーリング材を充填した〔写真1下〕。欠損した垂木をシーリング材で埋めようとしたが、残念ながらこれも逆効果だ。水分の排出を妨げるだけで全く意味がなかった。

 垂木だけでなく、桟木や野地板、母屋などにも腐朽が広がっていた〔写真2上〕。腐朽した垂木を取り外して見たところ、内部はスカスカの状態で予想以上に空洞化が進んでいる〔写真2中と下〕。このまま放置していれば、構造上の安全性にも影響を与えかねない状態だった。

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〔写真2〕予想以上に腐朽が進み内部はスカスカ
つぶさに点検すると、垂木や桟木の腐朽は予想以上に進んでいた。腐朽の原因は、垂木の側面と下面に塗装を施していたこと。上面だけ塗装していなかったので、上部から雨水が浸入し、逃げ場を失って内部にたまった。腐朽菌は桟木まで広がったとみられる(写真:第一浜名建装)
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