壁や柱が傾いている住宅が増えている。経験の浅い大工の急増や、仕様が変化した影響だ。引き渡し後の是正工事は困難なので、組み立て時や躯体検査時に必ず確認しておきたい。(日経ホームビルダー)

 「この住宅、壁が少し屋外側に傾いていないか」――。2階建ての木造住宅を建築中のA氏は、工事が終盤に差しかかったタイミングで友人のB氏にこのように指摘された。A氏がB氏とともに現場を見て回っていた時のことだ。

 建築関係の職人であるB氏は、仕事柄、水平や垂直に対して敏感だ。そのため、現場を見ていてどうしても気になったという。そんなB氏からの指摘を不安に思ったA氏は、施工を担当している住宅会社に「壁が倒れていないか」といった趣旨の質問を投げかけた。だが、住宅会社の担当者は「言いがかりだ」と反論するばかりで、取り付く島もない。きちんとした説明がなかった。

 この対応に怒った建て主のA氏は、第三者に確認してもらい真相を明らかにしようと決断。筆者に検査を依頼した。

 現場を確認すると、確かに傾いていた。長さ1.5mのデジタル水平器を使って壁の傾きを計測したところ、1階のダイニング・キッチンの壁で、1000分の10の傾きがあった〔写真1〕。この住宅は、天井の高さが2.4mなので、壁の上端は下端よりも24mm外側にずれていることになる。不同沈下を疑ったが、地盤自体に原因はなかった。躯体自体に問題があると考えられた。

〔写真1〕建て主のA氏は、建築関係の職人である知人のB氏に指摘されて壁の傾斜が気になり始めた。デジタル水平器で測定したところ、1000分の10傾いていた。この住宅の天井高は2.4mだったので、壁の上端は下端よりも外側に24mmずれて傾いている(写真:カノム)
[画像のクリックで拡大表示]

 この住宅での傾きは、構造耐力に関連する瑕疵があると判断できる状態だ。国土交通省が示す「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」(2000年建設省告示1653)では、壁が1000分の6以上傾いている場合は、構造耐力上の主要な部分に瑕疵がある可能性が高いと記載されている。

原因は大工の経験不足

 筆者のこれまでの経験では、軸組み工法の木造住宅で建築中に壁が大きく傾斜した例はほとんどない。通常は躯体を組む際に大工が状態をきちんと確認するケースがほとんどで、傾きはその段階で防げるからだ。まれに壁が傾いている現場に出くわす事例もあるが、その原因は不同沈下である場合が多い。

 ではなぜ、建て主A氏の住宅では建築中に躯体が傾いてしまったのか。原因の1つとして、大工の経験不足が考えられた。住宅会社の担当者に話を聞くなどして原因を調べたところ、昨今の大工不足の影響で、現場を担当した大工のほとんどが建築経験が浅いと分かった。指導できる立場の大工がいなかったのだ。

 A氏の住宅の場合、その後の検査で、壁の傾き以外にさまざまな瑕疵が見つかった。そのため、A氏は最終代金の支払いを拒否。この対抗措置として住宅会社は代金の支払いを巡って裁判を起こしたものの、A氏は「壁の傾斜は建て替えないと直らない」と主張し、建て替えを求めて反訴した。現在も係争中だ。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ホームビルダー」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら