2030年に向けた次世代ボディー開発の競争軸は小型車への対応である。環境規制、衝突安全規制、コスト抑制という3つの壁をどう乗り越えるか。自動車メーカー各社は、ボディー骨格への超高張力鋼板(980MPa級以上)の使い方に知恵を絞る。骨格自体の構造も見直し、コストを抑えながら軽さと強さの両立を競う。

 2030年に向けて、厳しくなる世界の燃費規制と衝突安全規制にどう対応していくのか─。小型車には、中型車のようにコストもかけられない。自動車メーカー各社は小型車開発において、「燃費規制」と「衝突安全規制」、「コスト抑制」という3つの課題の解決が求められている。

 ボディー骨格の軽量化と高強度を両立するために欧州メーカーは、アルミニウム(Al)合金や炭素繊維強化樹脂(CFRP)といった軽量素材を使う。ただ、こうした事例は中大型の高級車が対象である。価格が安い小型車に、コストが高いAl合金やCFRPを使うのは現実的ではない。

 小型車のボディー骨格は今後も、鋼板が中心になる。「超高張力鋼板」注)を使い、ボディー骨格を軽くして燃費規制に対応する。同時にボディー骨格の強度を高めて、衝突安全に対応する。さらに、超高張力鋼板を優先順位に沿って限定的に使うことで、コストを抑える。これが、3つの課題の最適解である。

注)超高張力鋼板とは一般的に、引っ張り強さが980MPa級以上の鋼板を指す。ボディー骨格に加工する方法によって、冷間プレス材と熱間プレス材(ホットスタンプ)に分かれる。

軽くしながら衝突安全に対応

 3つの課題のうち衝突安全への対応は、自動車メーカー各社で共通する。例えば、前面衝突では車両の先端をつぶして、衝突エネルギーを吸収する。一方、乗員室に近い部分は高強度の高張力鋼板を使い、変形しないようにする。衝撃の伝達ルート(ロードパス)を増やして、衝突エネルギーを車両全体にうまく逃がすようにする()。

図 次世代ボディー開発の考え方
質量の増加を抑えるために、超高張力鋼板の使用量を増やす。その上で、前面衝突と側面衝突、後面衝突で異なる考え方で設計する。日経Automotiveが作成。
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 側面衝突では乗員室を変形させないため、車両中央部の骨格に超高張力鋼板を多用する。また、骨格を環状構造にして骨格自体の強度を高める。後面衝突では車両後部全体を変形させて、衝突エネルギーを効率良く吸収する。側面衝突や後面衝突でも前方衝突と同様に、ロードパスを増やす。

 ボディー骨格の軽量化とコスト抑制という2つの課題については、超高張力鋼板の使い方に知恵を絞る。コストが高い超高張力鋼板は、センターピラーやサイドシルなど車両中央部の骨格に限定して配置する。ただ、超高張力鋼板の適用部位を限定しても、コストの増加は避けられない。ボディー骨格のコストの増加分は、車両全体で吸収して対応する。

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