2030年に向けた環境規制の強化を受けて、電気自動車(EV)の普及への道筋が見えてきた。同時に、自動車業界の均衡を崩し始めたのが中国・寧徳時代新能源科技(CATL)だ。車載電池で世界最大手の同社は、電池セルの供給の枠を超えてEV開発に影響力を持ち始めた。トヨタ自動車も電池の調達先として期待を寄せるが容易ではなく、駆け引きは激しさを増す。

 トヨタ自動車が電動化計画を5年も前倒しした注1)。同社は2017年12月に、世界で販売する車両の約50%(約550万台)を2030年までに電動車両にする計画を発表。その目標を2019年6月に改めた。

注1)電動車両には、EV、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)が含まれる。計画の前倒しは、欧州を中心とする環境規制の強化を受けてのもの。

 一見するとEVに積極的になったように感じるが、そうではない。2017年時点で2030年に100万台以上にするというEVと燃料電池車(FCV)の販売目標に対して、トヨタ副社長の寺師茂樹氏は「2025年ではEVは100万台に届かない」(同氏)と語り、早期の普及に懐疑的な姿勢を維持した。あくまで主軸はハイブリッド車(HEV)である。

 わずか1年半で計画を変更したのは、当初の想定が崩れたからだ。寺師氏は「予想を上回るペースで中国や欧州で電動化が進展している」と分析。この結果起こりうるのが、車載電池の争奪戦だ。「必要な量の電池の全てを自分たちだけではまかなえない」(同氏)ことが分かったという。内製やパナソニックに頼ってきた調達方針を改め、新たに5社と提携した(図1注2)

図1 トヨタが自前主義を改め電池を外部調達へ
2021年後半~22年前半に量産するとみられるトヨタのEV専用プラットフォーム「e-TNGA」(図の車両)は、CATLやBYDといった中国の電池メーカーの電池も使えるように設計した。(画像:トヨタ・スバル、CATL)
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注2)具体的には、CATLや中国・比亜迪(BYD)、東芝、GSユアサ、豊田自動織機の5社と新たに提携を決めた。これまでは、パナソニックとの合弁会社であるプライムアースEVエナジーやパナソニックから調達してきた。

 トヨタが選んだ電池の調達先で、最も大きな影響力を持つのがCATLだ。2017年にはパナソニックや韓国LG化学(LG Chem)などを抜いて世界最大の電池メーカーになったとされる。CATLが電池を供給する自動車メーカーは、欧州勢や中国勢を中心に40社以上とみられる。日系ではトヨタだけでなく、日産自動車やホンダとも調達契約を結んだ。

 多くの供給先を確保したCATLは今、自動車メーカーの開発領域に進出し始めている。電池セルの供給にとどまらず、EVプラットフォームの開発にまで関与する戦略を進める。同社が志向するのは「メガサプライヤー」のようなビジネスだ。CATLなしに新型EVを開発できなくなるという“依存関係”の構築を狙う(Part2参照)。既に、「複数の自動車メーカーとEVプラットフォームの共同開発を進めている」(CATLの幹部)という。

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