“全車コネクテッドカー化”を宣言する自動車メーカーが増えてきた。車両データを経営資源と位置付けるという変化の表れだ。中でも、データ収集を急ぐのがトヨタ自動車で、他社の車両など3つの方法で取得する。車室内のデータでは、運転者モニタリングの搭載や「Android」採用の動きが活発だ。

 自動車メーカーは長年、ビッグデータを価値に変えることができず、宝の持ち腐れになっていた。それが、移動サービスや自動運転車の開発、故障予知といった用途が見えてきたことで状況が変わりつつある。

 データが収益を生めば、データ提供とのバーターで車両を安く販売することも可能だ。特に、走行距離が長く、多くのデータを“収穫”できるライドシェア車両や商用車は恩恵を受けやすい。データビジネスに舵を切ることで、自動車メーカーは「製造・販売モデル」を残せるとの見方も出てきた。

 車両データに対する自動車メーカーの姿勢の変化が端的に表れたのが、“全車コネクテッドカー化”だ。インターネットにつながるクルマを普及させ、データを本格的に集めだす。

 例えばドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)は、2020年にVW乗用車ブランドの全ての新車にコネクテッド機能を標準搭載する予定だ。韓国・現代自動車(Hyundai Motor)は、「コネクテッドカーを2022年までに1000万台に増やし、データ保有量で世界1位になる」(同社Senior Vice PresidentのJung Sik Suh氏)と意気込む。

データは「経営資源」とトヨタ

 中でも、データ収集に積極的なのがトヨタ自動車だ。同社は、車両から収集して蓄積するビッグデータを「重要な経営資源」(同社コネクティッドカンパニーExecutive Vice Presidentの山本圭司氏)と位置付ける。

 その証拠に、トヨタはデータ収集源の多様化を進めている(図1)。これまでは、自社ブランドの量販車からの収集に頼ってきた。今後は、他社の車両からもデータを吸い上げる仕組みを模索する。トヨタが期待を寄せるのが自動運転車とシェアカーである。自社ブランドの量販車と合わせて、3つの方法を用意した。

図1 3つの方法でデータを収集するトヨタ
これまでは自社ブランドの量販車(右)からデータを吸い上げるのみだったが、自動運転車やシェアカーなどからも獲得できる体制を構築する。(中央の写真:トヨタ)
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 他社の自動運転車からデータを獲得する手段としてトヨタが打ち出したのが、自動運転車に向けた技術を外販する戦略だ。2019年1月に発表した。対象は、自動運転システムの状況や運転者の操作を常時監視して安全性を確保する「ガーディアン」機能である注1)

注1)日本語では“守護天使”と訳されるガーディアン機能の実体は運転支援システムである。自動運転システムやクルマの運転者を常時見守り、事故を起こしそうになると判断すると警告を発し、必要ならクルマを制御して回避行動を起こし、運転者を守る。

 同機能は、トヨタ自身は2020年に発売する自動運転車から搭載する。外部には米ウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)に供給することを発表しているが、広く供給する意向を示したのは今回が初めてだ。

 ガーディアン搭載車から収集するデータは、自動運転アルゴリズムの改良に使う。トヨタ車以外からも広く獲得できれば、人工知能(AI)アルゴリズムの成長が早くなる。

シンガポールの7000台をコネクテッド化

 シェアカーからのデータ収集に関しては、シンガポール・グラブ(Grab)との提携を取り付けた。走行データを集める見返りに、車両管理やメンテナンス、自動車保険などのサービスをGrabに提供する(図2)。走行データを活用することでメンテナンスの時期を最適化するほか、保険料の低減を見込む。

 2018年12月に取り組みを始め、1500台にコネクテッド機能を備えたデータ収集端末を搭載した。2019年内には7000台規模まで拡大する予定である。シンガポール以外を走るGrab車もコネクテッド化するという。

図2 データの対価はサービス提供で
トヨタとGrabは、車両データを共有し、車両管理やメンテナンス、自動車保険などを提供できるサービスを開発した。トヨタは、東南アジアで走るGrab車のデータを得られる。(出所:トヨタ)
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