「モノ」から「サービス」へ。MaaS(Mobility as a Service)時代に向かう中で、自動ブレーキ用の画像処理チップ大手のMobileyeが勝負に出る。2019年初め、同社は車載カメラのビッグデータを武器にサービス事業を展開すると宣言した。画像処理チップの製造販売が好調な状況で、なぜ動く必要があったのか。

 イスラエル・モービルアイ(Mobileye)が、日本の市街地における高精度地図(HDマップ)の構築を、2019年1月に本格始動させたことが分かった。車載カメラで撮影した映像を基に地図データを生成する仕組みを使う。同機能を備えた車両を500台規模で用意し、同年4月にも愛知県豊橋市で走らせる計画だ。

 この取り組みは表面的には地味だが、Mobileyeの今後の成長を決める重要な一手になる。これまでは画像処理チップ「EyeQ」シリーズの製造販売に頼ってきたが、サービス事業者へと大転換させる狙いがある。

 Mobileyeの業績は好調で、一見すると早急な変革の必要性はなさそうだ。EyeQは前方監視用カメラの処理チップとして大きなシェアを持ち、2018年は30社近い自動車メーカーに供給した。それでも変革を起こすのは、ハードウエアはいずれコモディティー化されて競合他社に追いつかれることを想定するからだ。

 「モノ」から「サービス」へ。自動車業界は転換期を迎えているが、本気で変革を進めている企業は少ない。Mobileyeは座して待つのではなく、積極的に動くことを決めた。

データから価値を生み出す“錬金術師”に

 Mobileyeが目指す将来像は、コネクテッドカーから収集するビッグデータを加工して価値を生む“錬金術師”である。

 「(半導体の製造販売による既存の)自動車領域の枠を飛び越える。原動力となるのが、車両から吸い上げるデータだ」――。MobileyeでPresident and CEO(最高経営責任者)を務めるアムノン・シャシュア(Amnon Shashua)氏は断言する。同氏は2019年1月、データを活用したサービス事業に注力する構想を明かした(図1)。

図1 クルマのビッグデータを活用してサービス事業者に
2019年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2019」。MobileyeでPresident and CEOを務めるAmnon Shashua氏(右)が新事業の構想を明かした。車載カメラで撮影した映像を基に地図データを生成する技術「REM」を積極活用する。
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 同社はこれまで、「多くの自動車メーカーの車両からデータを収集し、(半導体や認識アルゴリズムの開発に生かして)技術の向上を進めてきた」(Shashua氏)。この成功体験を今後はサービス事業の構築にも適用していく(図2)。

図2 半導体事業とサービス事業の両輪を回す
Mobileyeのビジネスモデルを図にした。クラウドに蓄積するビッグデータを成長の源泉と位置付ける。同社のデータ処理チップ「EyeQ」シリーズを搭載する車両の台数の確保が重要になる。
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 “錬金術”の肝は、ビッグデータをいかにして集めるかだ。Mobileyeが中核に据えるのが、「REM(Road Experience Management)」と呼ぶ技術である注1)。車載カメラで認識した標識などの情報をクラウドに蓄積するものだ。

注1)REMだけでなく、Mobileyeは車室内のカメラを使った運転者監視システムのデータやCAN(Controller Area Network)を介して得た車両データもクラウドに取り込み蓄積する。

 Mobileyeは既に、REM機能を持たせた車両を世界10カ国で2万台以上走らせている。冒頭の愛知県豊橋市のプロジェクトもその一環だ(Part2参照)。REMは同社の画像処理チップ「EyeQ4」に内蔵し、2018年の量産開始を機に実用化した。2019年には「数百万台規模の量産車にEyeQ4を搭載し、世界中を走り回る」(同社の幹部)見込みである。

 Mobileyeは既に、サービス事業の顧客を確保している。REMで構築するHDマップは、日産自動車やドイツBMW、同フォルクスワーゲン(Volkswagen)などが採用を決めた注2)

注2)日産は2019年内にHDマップを車両に搭載し、高速道路の複数車線に対応した自動運転に対応させる。

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