MaaSは、自動車にとどまらず、鉄道やバス、自転車などを巻き込む壮大なサービスである。その先行事例と言えるのが、カーシェアやサイクルシェアなど個別のモビリティーシェアサービスだ。実のところ日本では、モビリティーシェアに20年以上の歴史がある。国内主要各社の現状の実力を見つつ、未来のMaaSの可能性と課題を探る。

 世界で移動サービス「MaaS」が脚光を浴びる中、日本でもMaaSの主要サービスであるモビリティーシェアの認知度が急上昇している。PwCコンサルティングが2018年5月に実施した調査では、移動手段としてのシェアサービスを知っている消費者が69%に上った。前年の42%から27ポイント増えた。さらにシェアサービスを「利用したい」または「利用を検討してもいい」と回答した消費者は36%で、前年比14ポイント増だった。

 利用意向が急上昇するのは「日本の都市部ではクルマを持たない生活を志向する消費者の比率が高くなっているからだ」と、PwCコンサルティング常務執行役パートナーの野口功一氏は話す。街中で、カーシェアやサイクルシェアの車両や駐車場を見る機会が増えてきた。

 一方で、変調も見えてきた。例えば都市部で自転車を借りられるサイクルシェアを「ofo」ブランドで手掛ける中国大手の北京拝克洛克科技は、日本市場からの撤退を決めた(図1注1)。サイクルシェアが一気に拡大した中国では最近、サービスを停止した事業者の車両廃棄が社会問題になっている。

図1 「ofo」のサービス中止を知らせるサイト
「ofo」ブランドで手掛ける中国大手は日本市場からの撤退を決めた。大津市や北九州市などに2018年10月いっぱいで日本事業を停止すると通告した。
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注1)国内主要都市でサイクルシェアを手掛けるNTTドコモ子会社のドコモ・バイクシェアは、2018年3月期に売上高を前年度比約2倍の約9億5500万円に伸ばしたものの、4億4600万円の純損失を計上した。規模拡大に合わせた先行投資がかさみ、まだ利益を出せる状況には至っていない。

 アーサー・D・リトル・ジャパンでパートナーの鈴木裕人氏は「モビリティーシェアは、地域ごとに利用者数をどれだけ確保できるかの勝負」と指摘する。ネット経由でモノやスキルをシェアするサービスであれば、場所が離れていてもマッチングできる。

 一方でモビリティーシェアは利用者と車両が同じ場所に必要で、サービスを拡大する制約が大きい。地域ごとの提供者と利用者の数のバランスが悪いと、提供者の利益が上がらなかったり利用者の満足度が下がったりする。事業者が手間と工夫を凝らして、地域ごとの狭い範囲内で需要と供給のバランスをとらねばならない。まさに“局地戦”である。次ページから日本のカーシェアとサイクルシェア、タクシー配車の現状を分析し、MaaSの未来を占う。

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