自動運転車の開発で他を圧倒して先行するのがグーグル系のウェイモである。トヨタですら、勝つ道筋が見えない。しかもトヨタをあざ笑うかのように描く未来図は壮大だ。MaaSの先を見据えた都市プラットフォームの構築に着手する。トヨタは強さの源泉であるデータの囲い込みにくさびを打ち込む。必死の戦いに迫る。

 「ソフトウエア企業であるにも関わらず、トップに“ものづくり”のプロがいる。米ウェイモ(Waymo)には死角がない」―。

 グーグル(Google)親会社の米アルファベット(Alphabet)傘下で自動運転開発ウェイモを訪れた日系自動車関連企業のトップが、ため息をつく。面会したCEO(最高経営責任者)のジョン・クラフチック(John Krafcik)氏が、自動車工場を熟知する人物だったからだ。

 クラフチック氏は、韓国・現代自動車やトヨタ自動車などで経験を積んできた。トヨタ時代には、世界の工場を回って課題を探る業務に関わったとされる。米マサチューセッツ工科大学(MIT)で、リーン生産方式を研究した経験もある。ウェイモの弱点であるクルマの“ものづくり”の知識を補完するのには、うってつけの人物である。

 実のところウェイモ自身は、車両を製造しない方針である。提携先に製造を任せるため、クラフチック氏の経験は必要がないように思える。それでも同氏をトップに据えるのは、“ものづくり”の知識がなければ、提携先との交渉で足元を見透かされると考えたからだろう。多くのハードウエア技術者を抱える米アップル(Apple)と同じである。

 ウェイモを訪れた日系企業トップは、自動車メーカーと向こうを張って交渉できるクラフチック氏にトップを託すグーグル系のしたたかさに舌を巻いたわけだ。

 自動運転車の実用化を目前にして花開こうとする移動サービス「MaaS」。トヨタにとって、MaaS時代の最大の競合企業がウェイモである(図1)。ウェイモの自動運転ソフトウエアを使ったMaaS用車両が成功すれば、トヨタの利益はあっという間に吹き飛びかねない。

図1 ウェイモはMaaSに関心を寄せる
ウェイモは2018年8月、米アリゾナ州フェニックスの鉄道会社バレー・メトロとの提携を発表した。(出所:ウェイモ)
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 ウェイモは、自動運転開発でトヨタに大きく先行する。2010年に自動運転車の試作車を発表していた。トヨタが「自動運転を目指さない」と話し、その将来性に気付いていなかった2013年頃、ウェイモは既に30万km超の走行実験を果たしていた。2018年10月には、総走行距離が1000万マイル(約1600万km)に達したと発表した。米国では、2018年末~19年初頭に実用化するとの見方がある。

 トヨタがウェイモを強烈に意識するのは、ウェイモが米国企業であり、同国を優先して自動運転ソフトの開発を進めている点も大きい。トヨタにとって米国市場は利益の源泉。ウェイモの開発が成功すると、トヨタの経営は真っ先に揺らぐ。

 現時点でウェイモは、自らMaaSオペレーター(運営者)になるのか明らかにしていない。MaaSは「もうからない」と考えるトヨタと同様に、MaaS運営者に自動運転ソフトを提供する「B2B」にとどまる可能性はある。

 それでもトヨタはMaaS運営者の有力候補である米ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)に出資し、その筆頭株主であるソフトバンクと手を組んだ。ウェイモを含むグーグル系が、自ら開発する自動運転車を駆使したMaaS運営者となって米国自動車市場で台頭するシナリオに備える。

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