トヨタが自らMaaSを手掛けることから距離を置くのは、もうけにくいとみるからだ。MaaSは地域ごとの公共交通機関との連携が必要な“局地戦”といえ、手間と時間がかかる。トヨタはMaaS運営者が望む、維持管理費の低い自動運転車の開発に活路を見いだす。MaaS運営者の要望に積極的に応じ、先行するグーグル系企業との差異化に力を注ぐ。

 トヨタがMaaSの主役ではなく“脇役”の座にとどまる方針を軸に据えるのは、「MaaSでもうけるのは難しい」(トヨタ技術幹部)との考えが背景にある。MaaSは、限られた地域に閉じた“ローカルビジネス”の色が濃い。一つの商品を世界で大量に売るグローバルビジネスとは対極。「“局地戦”の小さなビジネスになりがち」(アーサー・D・リトル・ジャパンでパートナーの鈴木裕人氏)と言える。トヨタはMaaSオペレーター(運営者)に車両とその利用基盤を提供する“支援役”に回り、主役から距離を置くことにした(図1)。

図1 トヨタのMaaS関連での提携・出資先
トヨタ自身が直接提携したり出資したりする企業を示した。多くが、トヨタの顧客となりうるMaaS運営者といえる。なおトヨタが関わる未来創生ファンドの出資先を加えるとさらに多くなる。青色はソフトバンクの出資会社。
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 “局地戦”になるのは、公共的な側面が強く、国や自治体、公共交通機関の協力が欠かせないためである。MaaS運営者となるには、「多くの利害関係者と合意を重ねる手間を惜しまないこと」(鈴木氏)が重要。これには時間がかかり、事業拡大の速度を高めにくい。米アルファベット(Alphabet)傘下のウェイモ(Waymo)に対する出遅れを挽回するのが最優先のトヨタにとって、今から手を出しにくい。

 フィンランド政府の後押しを受けて華々しく誕生したMaaSグローバル(Maas Global)。トヨタの金融子会社やデンソーの出資を獲得し、日本進出をもくろむ。だが内情を知る関係者は、「かなり苦労している」と打ち明ける。鉄道会社などとの交渉が進んでいないようだ。MaaS運営者が海外で利害関係者を巻き込む難しさを象徴する。

 鉄道会社にとって、MaaS運営者は敵にも味方にもなる微妙な存在である。東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構の機構長でMaaSに詳しい須田義大氏は、日本の鉄道会社は「ホテル業界の二の舞になることを恐れる」と読み解く。MaaS運営者が、ホテルの顧客情報や価格決定権を握るオンライン旅行予約の米エクスペディア(Expedia)と重なるわけである注1)

注1)鉄道会社では、東日本旅客鉄道(JR東日本)や小田急電鉄などが、自らMaaSに取り組み始めた。Part1で紹介したMaaSグローバルの調査が示すように、MaaSの導入で自家用車(マイカー)の利用率は半減し、公共交通機関の利用が増える。鉄道会社には好機と映る。

図2 MaaS運営者はどの自動運転車を選ぶのか
(a)ウェイモとクライスラーの車両、(b)ウェイモとジャガーの車両、(c)GMクルーズの車両、(d)トヨタの「イーパレット」。(写真:a、bはウェイモ、cはGMクルーズ、dはトヨタ)
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