スズキが2017年12月に発売したクロスオーバータイプの新型小型車「クロスビー」(図1)。2015年初めにクロスビーの開発責任者に就いた髙橋正志は、「ハスラーをそのまま大きくしたクルマにはしない」と宣言して開発をスタートさせた。大ヒットを記録した軽自動車「ハスラー」との“距離感”を探り続けた2年半だった。

図1 スズキの小型クロスオーバー車「クロスビー」
2017年12月に発売し、価格は約177万円から。箱型の外観デザインの軽自動車「ハスラー」と差異化するため全体的に丸みを持たせている。目標を上回る月間2700台の販売を維持しているという。
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 2013年冬、髙橋は「東京モーターショー」で説明員として会場に立っていた。アシスタント・チーフ・エンジニアの立場で開発に携わっていたハスラーのお披露目の場だった。

 「これの小型車って出ないんですか」―。ハスラーの説明員として来場者の方々と話をする中で、何度もこんな声をもらった。発売した後も、ハスラーの小型車を望む声が、お客様相談室や営業現場などから絶えず上がっていた。

 こうした要望を受けて、開発の先行検討が始まりました。可能性として、どういったことができるかを議論してきました。

 スズキは過去、「ワゴンRワイド」のように軽自動車をベースに拡幅した小型車を展開してきた。だが、「○○ワイド」や「○○プラス」として企画した車両は、同社の中で“苦い経験”として刻まれている。教訓だ。

 確かに、昔はスズキの小型車は軽自動車をベースにストレッチさせた作り方をするモデルが多かった。でも小型車には、軽自動車とは異なる質感が求められます。単純に縮尺を変えるだけではなく、きちんと小型車としての魅力を表現する必要がありました。

 「ハスラーの小型車版が欲しい」と言われた時に、どの要素が欲しいんだろうと悩みました。ユーザーや当社の営業にも話を聞きました。まずはスタイリングが特徴的で、愛嬌があると。「かわいい」や「かっこいい」の捉え方はいろいろありますが、ハスラーに対して皆さん好意的でした。もう一つ、ハスラーが評価されているところがありました。居住性がきちんと確保されている点です。見た目だけでなく、ちゃんと使える。

 先行検討を経て、2015年初めにクロスビーの開発が正式にスタートする。「ハスラーを大きくすればいいだろう」という乱暴な考え方もあったが、髙橋は“ハスラーワイド”の可能性を消した。

 名前を含め、「ハスラーをある程度残した方がいいのでは」という意見があったのは事実。でも、私としては、ハスラーから独立した、今までにない小型車としてみなさんに愛着を持って長く乗ってもらいたいと思っていた。こうした思いを役員へのプレゼンテーションでも伝えて、開発をスタートさせることができた。

髙橋正志(たかはし・ただし)
1969年生まれ。静岡県出身。1994年、スズキ入社。開発部で材料や表面処理の開発を担当した後、エンジン設計や技術企画の部門を経験。2013年に第1カーラインに配属され「ハスラー」のアシスタントチーフエンジニアに。2014年にチーフエンジニアとなり、「スペーシア」や「クロスビー」の開発責任者を務めた。
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