2代目「N-BOX」の開発責任者である白土清成は、通常の「正常進化」を大きく超える改良を決断した。初めての全面改良でありながら、燃費の向上を狙い、エンジンやプラットフォームを全面的に造り替えた。ボディーの軽量化では、「中途半端な取り組みは許されなかった」と振り返る。車両価格の上昇をできるだけ抑えるため、開発当初から部品メーカーと一体となってコスト削減を進めた。

 2011年12月に発売した先代N-BOXは、軽自動車における年間販売台数で4回首位を獲得した。軽自動車で最大級の車内空間を実現した他、背高タイプの軽ワゴンでトップクラスの低燃費を達成。こうした特徴がユーザーに支持された。白土は先代車の開発責任者を補佐するLPL代行を務めていた。

 先代車がユーザーに支持されて好調に売れていたので、間違ったことはやってないという自信はありました。開発責任者になった人が最初に悩むのは、「正常進化でいくのか」、「先代車に比べてがらりと変えるのか」という点でしょう。特に売れた車種の次のモデルでは、かなり大胆な改良をしないと、「さらに良くなった」ということが伝わりにくい。逆に大きく変えると、既存のユーザーから「なぜ変えたのか」と言われてしまう場合があります。

通常の正常進化を超える目標を設定

 私の場合は、先代車のLPL代行を務めていましたので、最初は少し悩みましたが、2代目の開発は基本的に、「正常進化でいこう」と決めました。正常進化とは、良いところを伸ばし、悪いところを直すということです注1)

注1)ホンダは2代目N-BOXを、2017年9月に発売した。主なターゲットは子育て中の家族(女性)層である。ダイハツ工業の「タント」やスズキの「スペーシア」、日産自動車/三菱自動車の「デイズルークス/eKスペース」などが競合車になる。発売した2017年9月から2018年7月まで11カ月連続で、軽自動車と登録車を合わせた国内の新車販売台数で首位を維持する。

 クルマの開発では、先代モデルの基本技術を継承することが少なくありません。しかし今回の開発にあたっては、通常の正常進化を大きく超える目標を定めました。そして、パワートレーンやプラットフォームを全面的に刷新する企画を会社に提案しました(図1)。

図1 軽自動車の2代目「N-BOX」
2017年9月に発売。価格は138万円から。先代車の特徴を維持しながら、燃費向上を狙い、プラットフォームやパワートレーンを刷新した。発売から11カ月連続で国内の販売台数で首位を獲得した。
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 白土が言う先代車の悪いところとは、車両が重いことだった。車両が重いと燃費が悪化する。先代車は競合車(スズキの「スペーシア」など)に軽量化で先行を許していた。

 2代目の開発では、車両の軽さで競争力のあるプラットフォームに作り変えたいという思いがありました。ただし、車両を軽くすると言っても50kg軽くするのか、100kg軽くするのか。そこで、最初は確実にできることとして、プラットフォームを刷新して車両質量を70~80kg軽くするという目標を定めました注2)

注2)初代N-BOXのJC08モード燃費は発売当初、22.2km/Lにとどまっていた。その最大の要因が車両の重さだった。その後、エンジンの改良などによって2012年12月に24.2km/L、2013年12月に25.2km/Lまで燃費を改善したが、競合車に及ばなかった。エンジンの改良だけでは、燃費改善に限界がある。そこで2代目N-BOXでは、プラットフォームとパワートレーンを刷新し、燃費を27.0km/Lまで高めた。ガソリンエンジン車でありながら、競合車のスズキ「スペーシア」の30.0km/L(エンジン駆動をモーターで支援する簡易HEV)に迫る。

 この目標を商品開発担当役員に提案したところ、すんなりとは通りませんでした。「どれだけできるか」ではなく、「どれだけやらなければならないか」を考えて提案しなさいという指示を受けたのです。70~80kgぐらいの軽量化の目標では、プラットフォームを刷新するのは許されないということでした。

白土清成( しらと・きよなり)
1986年ホンダ入社。87年から本田技術研究所に配属され、初代「NSX」や「アコード」などのボディー設計を担当。先代N-BOXで設計領域のLPL(開発責任者)代行を担当、2代目N-BOXでLPLを務める。
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