排ガス不正問題の発覚後、ディーゼルエンジンへの逆風がやまない。ディーゼルはこのまま消えるのか。厳しい見通しがあふれる中、マツダが起死回生の一手を打った。低コストと厳しい排ガス規制の達成を両立させる“アップサイジング”ディーゼルを投入した。逆風の震源地であるドイツ勢は、虎視眈々と復活をもくろむ。再興の道筋が見えてきた。

写真提供:マツダ
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 ディーゼルエンジン車の販売に強烈な逆風が吹く中、マツダが再興にのろしを上げた。新開発の排気量1.8Lのディーゼルで、尿素SCR(選択型還元触媒)を使わずに、2020年から欧州で始まる厳しい排ガス規制を達成する見通しであることが分かった(図1)。

図1 マツダのアップサイジングディーゼル
排気量を1.8Lに増やして、NOx 排出量を減らした。従来は1.5L。出所:マツダ)
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 従来の排気量は1.5Lで、0.3L増やした。排気量を増やす手段は、出力向上につなげるのが普通だ。マツダは排気量の増加を“排ガス規制対策”に活用する常識を覆す発想で、最大の課題であるコストが増えるのを抑える。2018年5月に一部改良した小型SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)「CX-3」に、新しい1.8Lディーゼルを搭載した(図2)。

図2 CX-3に搭載
1.8Lディーゼルに加えて、2.0Lガソリンエンジンを用意する。
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 マツダが達成にめどをつけた規制は、実走行中の窒素酸化物(NOx)排出量を規制する、欧州で始まるRDE(Real Driving Emission)の第2段階。2017年に始まった厳しい第1段階(NOx排出量168mg/km)から、さらに規制値を下げたもの(同120mg/km)だ。

 達成には、排ガス後処理装置の一つである高価な尿素SCRの大型化が必要とされる。ただでさえディーゼル本体のコストは、ガソリンエンジンの2倍近くに達する。RDEの第2段階への対応で、車両質量によるが後処理装置だけで5万~10万円のコスト増になると推定する声がある。安価なガソリンエンジンを造れる水準だ。

 ディーゼルはもう無理─。大幅なコスト増による競争力の低下を懸念し、開発から撤退するメーカーが出始めた。例えば日産自動車の開発幹部は、「もうディーゼルを開発していない」と明かす。

 トヨタ自動車は、欧州でディーゼル乗用車の販売をやめた。代わりに、ガソリンエンジンを使った高出力ハイブリッド車(HEV)を新たに開発。ディーゼル車の代替として投入する。トヨタのエンジン技術者は、「大型化した尿素SCRを使うディーゼルに対して、コスト面でHEVが優位に立つのではないか」と推測する。

 悲観的な見方が強まる中、マツダの“SCRレス”ディーゼルの投入は、起死回生の一手になる。SCRがなければ、コスト面でHEVに対する優位性を維持できる。ディーゼルの強みである大きな低速トルクと高い燃費性能を生かせば、HEVなどの他のパワートレーンと今後も十分に競える。

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