三菱重工工作機械が内歯車を加工する工具として、ピニオンスカイビング工具を改良した「スーパースカイビング工具」を開発した。「工具の寿命が短い」というピニオンスカイビングの欠点を解決する。新加工法に対応するスカイビング盤を発売し、自動車用に品質の高い歯車を量産することに役立てる。

 遊星歯車機構を使ったAT(自動変速機)の段数は増え続けてきた。登場した当時は2段変速だったが、ついに10段変速が現れた。ハイブリッド車(HEV)では遊星歯車機構による動力分割機構に4段のATを組み合わせたものが出てきた(図1)。遊星歯車機構の役割は大きくなっている。

図1 内歯車を使う車両の例
トヨタ自動車の「レクサスLS」は4速AT(自動変速機)を内蔵するハイブリッド機構を採用する。内歯車は、4速ATだけでなく、遊星歯車による動力分割機構で使われている。なお、本記事で紹介する技術とレクサスLSは直接関係ない。(撮影:編集部)
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 今後、イン・ホイール・モーターを使った電気自動車(EV)が出てくると、そこにも遊星歯車機構が必要になる。エンジン車ではエンジン音にかき消されて感じられなかった歯車音が、EVでは前面に出てくる。「モータ音だと思っていたものが、実は歯車音だった」ということはよくある。遊星歯車機構の質がこれまで以上に問われている。

 遊星歯車機構のうち、加工が一番難しいのは内歯車だ注)。歯が内側にあるため、外側から加工する通常の歯切り盤が使えない。

注)遊星歯車機構は中心の太陽歯車(サンギア)、複数の遊星歯車(プラネタリーギア)、外側の内歯車(リングギア)で構成する。

 内歯車の加工法として「スカイビング」の研究が進んできた(図2)。「ギアシェーパー」、「ブローチ」に続く第3の加工法である。これまでのスカイビングはピニオン形状の工具を使うため「ピニオンスカイビング」と呼ぶ。少量生産を中心に実用化が始まったが、自動車用歯車の量産用に行き渡っているとはまだいえない。

図2 ピニオンスカイビング加工の加工原理
工具の回転軸とワークの回転軸に角度を付け、削る。工具は短い(薄い)ピニオン形状だ。(出所:三菱重工工作機械)
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 三菱重工工作機械はピニオンスカイビングを改良した「スーパースカイビング工具」を開発した1)。自動車用歯車の量産に向けて加工機械「MSS300」を供給する(図3)。

図3 スーパースカイビング
上から工具が伸びる。下がワーク。(出所:三菱重工工作機械)
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3つの加工法は一長一短あり

 歯車の切削法にはそれぞれ利害得失がある()。ギアシェーパーは、工具を往復運動させて加工する。加工時間の半分は工具が戻っている時間なので、生産性が低い(図4)。また、クランク機構を使い、回転運動を直線運動に変えて刃先を往復させるため、切削速度が正弦波状に変化する。速いところと遅いところができるので、どうしても精度が落ちる。

表 これまでの内歯車加工方法の特徴
「工具寿命が短い」ことがピニオンスカイビング唯一の短所だ。( )内の数字はギアシェーパーを1としたときの指数。三菱重工工作機械の資料を基に作成した。
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図4 ギアシェーパーの工具の動き
往復運動の片道しか加工しないので、加工能率は低い。(出所:三菱重工工作機械)
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 ブローチは、刃を多数並べた工具を立てて削る(図5)。一番下の刃は素材の穴の形状に近い刃で、一番上の刃が最終形状。中間の刃は次第に最終形状に近づいてくるように並ぶ。素材の穴に工具に当て、ワークを下から上に移動させて加工する(図6)。

図5 ブローチの工具
内歯車の内径一杯の大きな工具で、価格も高い。(出所:三菱重工工作機械)
図6 ブローチの加工原理
ワークを下から上に移動させる。ブローチの上にある刃ほど最終形状に近い。(出所:三菱重工工作機械)

 1回の動作で済むため、サイクルタイムが短く量産に向いている。逆に、それ以外には向かない。歯車1種類につき1個の工具が必要になる。工具は内歯車の内径と同じ太さがあり、長さは1m以上、価格も200万円以上するもので、量産規模の小さい歯車を造るとワーク1個に配分する工具のコストが上がる。

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