自動車部品大手ドイツ・ボッシュ(Bosch)の日本法人は2019年6月、年次記者会見を開催し、スマートフォンを使ったMaaS(Mobility as a Service)向けデジタルキーを発表した。2021年に量産車に適用する。半導体チップの製造ばらつきを利用し、セキュリティーを高めたのが特徴だ。

 「半導体を内製している強みを生かした」。ボッシュ日本法人社長のクラウス・メーダー(Klaus Meder)氏は、ドイツ本社が開発したデジタルキー「パーフェクトリーキーレス」についてこう述べた(図1)。スマホが搭載するブルートゥース用の半導体チップにはわずかな製造ばらつきがあり、それによって電波の周波数特性が微妙に異なる。その違いを“指紋”のように利用してスマホを識別する。

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図1 ボッシュがデジタルキーを開発
(a)スマホごとに微妙に異なる電波の特性を“指紋”のように利用し、特定のスマホを識別する。(b)ボッシュ日本法人社長のクラウス・メーダー氏。(撮影:日経Automotive)

 こうしたアイデアは多くのスマホメーカーとの対話の中から生まれたという。同社はブルートゥース用の半導体チップを直接手がけていないが、スマホ向けのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加速度センサーでは約5割の市場シェアを持つ。このため、多くのスマホメーカーと取り引きがあり、さまざまな対話を重ねる中から今回の技術が生まれたとする。

 会見では米フォード・モーター(Ford Motor)の「マスタング(Mustang)」にデジタルキーのシステム(アンテナやECU)を組み込んだ実験車両でデモを見せた(図2)。スマホをポケットに入れたまま解錠したり、エンジンをかけたりできることを示した。ブルートゥースを使っているので、NFC(Near Field Communication)のようにスマホをかざす必要がない。その分、漏れ出る電波からIDを盗まれるリレーアタックのリスクが高いと思われるが、そこは電波特性の“指紋”によって不正アクセスを排除する。

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図2 実験車両を使ったデモ
(a)デジタルキーのアンテナやECUを組み込んだ実験車両。(b)ボッシュ日本法人執行役員の石塚秀樹氏。(撮影:日経Automotive)

 デモでは見せなかったが、実際にはユーザーが自身のスマホをクルマに登録する「ペアリング」の作業が初回だけ必要になる。車載器をペアリングモードにしておき、自身のスマホが発するブルートゥース電波を受信させて登録する。スマホを買い替えた場合も、この作業をやり直す必要がある。家族や友人など、クルマに乗車する人も、それぞれのスマホを登録することになる注)

注)自宅のクルマのトランクに荷物を届けてもらう場合、宅配業者にデジタルキーを渡すことも可能だ。その場合はスマホによる識別機能を切り、トランクへのアクセス権のみを付与する。こうしたデジタルキーの設定はスマホアプリからできる。宅配業者は受け取ったデジタルキーを使ってトランクを開けられるが、エンジンはかけられない。

 デジタルキーに関しては、業界団体の米Car Connectivity Consortium(CCC)が標準化を進めているが、今回の技術はボッシュ独自の方式である。「デジタルキーはセキュリティーの高さで差別化できるため、独自技術で特徴を出す」(ボッシュ日本法人執行役員の石塚秀樹氏)と意気込む。

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