ルネサス エレクトロニクスは2019年3月29日、同社半導体工場の一時生産停止と米IDT(Integrated Device Technology)の買収に関して説明した。工場の一時生産停止に関しては、「需要減少時にコストを削減するための措置であり、顧客への供給は止めない」(同社社長兼CEO(最高経営責任者)の呉文精氏)と述べた(図1)。

図1 ルネサス社長兼CEOの呉文精氏
手に持っているのはIDTとルネサスのチップを組み合わせたリファレンスデザインの一例。(撮影:編集部)
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 同社は2019年2月の決算発表で「売上高は2019年第1四半期(1~3月)が底で、第2四半期に向けて回復する見通しだが、下期(7~12月)は見通しにくい」(同社)としていた。下期が見通しにくい理由として、米中の貿易摩擦や中国の景気低迷、英国の欧州連合(EU)離脱の影響などを挙げていた。このため、同社は下期に売上高が大きく回復しなくても利益を出せるように、コストを抑える方針だった。具体的には、3月初旬から工場の一時生産停止を検討した。

 前工程工場の平均稼働率(ウエハー投入量ベース)は、2018年第4四半期(10~12月)に5割台と低迷していた(図2)。特に那珂工場の300mmラインは在庫調整をした関係で、稼働率が5割を下回っていたようだ。在庫に関しては、2018年12月末の時点で自社在庫は健全な水準まで減らせたという。ただ、中国市場向けの産業ロボットや有機EL向け製造装置の需要が縮小したことで、販売代理店の在庫は「まだ理想的な水準にまでは下がっていない」(同氏)という。

図2 前工程工場の平均稼働率
2018年第4四半期(10~12月)には5割台だった。(出所:ルネサス)
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 在庫削減により、2019年第1四半期(1~3月)の前工程工場の平均稼働率は6割に改善したものの、「この水準では一部の工場を一時的に生産停止したほうがコストを削減できる」(同氏)と判断した。前工程工場ではクリーンルームを維持するための空調などの動力コスト(電気代)が大きいからだ。「これによって顧客への供給が滞ったり、売り上げを失ったりすることはない」(同氏)。一部の工場を止めても、残った工場で顧客の需要に応える。

 一時的な生産停止をするためには、顧客との調整やシミュレーションが欠かせない。同社はその作業を3月初旬から始めた。まだ具体的な生産停止計画は定まっていないという。ただ、「4~6月の前工程停止期間は、当初計画の“最大1カ月"から相当減少する見込みだ」(同氏)と述べた。7月以降のスケジュールは未定で、今後の需要に合わせて判断していく。

 もし下期に需要が回復すれば「すぐにアクセルを踏む」(同氏)。一般に前工程を一時停止して、再び立ち上げるとなると、品質や歩留まりが以前よりも落ちるリスクがある。ただ、同社は「生産の一時停止や再立ち上げのノウハウは十分に蓄積している」(同氏)という。普通、停止するのに1日、再度立ち上げるのに3日かかるそうだ。このため、生産停止するなら、ある程度の期間をまとめて止めたほうが効率が良いという。

 同社が構造改革に伴いEOL(End of Life、生産終了)を増やした結果、競合他社にシェアを奪われ、工場を埋める製品が不足したのではないかとの見方は否定した。ただ、家電向けマイコンなどでは日系メーカーには強いものの、成長率が高い韓国や中国の家電メーカーには十分に食い込めていないなど、「改善すべき点はある」(同氏)と述べた。今回の一時生産停止はあくまで需要減少によるもので、「クルマ、産業機器、家電のすべての分野で需要が落ち込んだ」(同氏)と説明した。

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