日本精工(NSK)は、多様な操舵(そうだ)感を演出可能な次世代のステアリング制御ソフトウエアを開発した。ステアリングホイールを切った分だけ曲がるというより自然な操舵感覚に近づけたり、操舵角によらずに操舵トルクを一定に維持したりすることが可能という。摩耗など経年変化による操舵感への影響も受けにくいとする。2020年代半ばの実用化を目指す。

 最大の特徴は、運転者がステアリングホイールを介して加えた操舵トルクではなく、運転者が入力した操舵角を角度センサーで検出し、操舵角に見合った操舵(ステアリングホイール)の反力トルクをモーターで発生させて運転者に戻す制御を採用したことだ(図1)。車輪の向きを変えた結果として発生する車輪の反力トルクをステアリングシステムの系全体をさかのぼるように運転者に伝えていた従来方式と違い、ステアリングが重い・軽いといった運転者の操舵感に直結する操舵の反力トルクを柔軟に設定できる。

図1 NSKが開発した次世代のステアリング制御ソフト
(a)次世代の制御ソフトでは、操舵角を角度センサーで検出し、操舵角に見合った操舵の反力トルクをモーターで発生させて運転者に戻す。(b)従来の制御ソフトでは、操舵トルクをトルクセンサーで検出し、車輪の向きを変えるのに必要なトルクを上回るようにモーターでトルクを支援して車輪の向きを変え、その車輪からの反力がステアリングシステムの系全体をさかのぼるように運転者に伝えられる。(画像:NSK)
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 同社ステアリング&アクチュエータ技術センター ステアリングR&Dセンター ステアリングシステム開発部グループマネジャーの小磯貴之氏によれば、「従来の制御ソフトでは、操舵角と車輪が発生させる反力トルクの関係に基づいた相似形の制御になってしまう。今回開発した次世代の制御ソフトでは、操舵角の増加に応じて反力トルクを増やすことも減らすことも一定にすることもできる」と話す。また、操舵の角速度(ヨーレート)と操舵トルクの関係において、より線形に近く、かつヒステリシスを小さく抑えることが可能になり、ステアリングホイールを切った分だけ曲がるというより自然な操舵感覚に近づけられるという(図2)。

図2 操舵の角速度(ヨーレート)と操舵トルクの関係
(a)がコラム式EPS、(b)がラック式EPSへの適用例。グラフは、いずれも上段が次世代の制御ソフト、下段が従来の制御ソフトを適用したときの操舵の角速度(縦軸)と操舵トルク(横軸)の関係を示している。次世代の制御ソフトの方が、より線形でヒステリシスも小さくなっている。(画像:NSK)
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 実際、同社では、次世代の制御ソフトを搭載した試験車両をドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)の「ポロ」「ゴルフ」をベースに開発済み(図3)。その試験車両には、操舵角が増加しても反力トルクを一定にするという制御モードも搭載されており、試乗してみて従来の操舵感と明らかに違った味付けになることを体験できた。運転環境や運転者の好みに応じて、より多彩な操舵感を提供することが可能になる。

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図3 次世代のステアリング制御ソフトを搭載した試験車両
(a)VWのポロをベースとした試験車両。ステアリングシステムには、コラム式の電動パワーステアリング(EPS)を使用する。(b)VWのゴルフをベースとした試験車両。ステアリングシステムとしてステア・バイ・ワイヤシステムを搭載する。(撮影:日経 xTECH)

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