ドイツ・アウディ(Audi)が2018年10月15日に日本で発売する新型高級セダン「A8」。2017年に欧州で発表したときはレベル3の自動運転技術を採用すると高らかに打ち出したものの、日本に限らず世界でレベル2(運転支援)にとどまる(図1)。法律が整っていないからだ。“フライング発表”の背景には、同社の焦りが透けて見える。

図1 2017年のA8発表風景
Audiの前CEOであるルパート・シュタートラー(Rupert Stadler)氏がレベル3を採用すると宣言した。なお同氏は、2018年6月に排ガス不正問題に関係したとして、ドイツ当局に身柄を拘束された。(出所:Audi)
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 複数の自動運転技術者が、Audiが2017年7月にレベル3の車両を投入すると発表した時点で、「近い将来に法律が整う見込みはなかった」と指摘した。現在も国際連合で、レベル3以上の車両を製造するのに必要な安全要件などを議論している。早くとも2019~2020年までかかるとの見方がもっぱらだ。

 加えて、A8にはレベル3に必須とされるドライバーモニタリング(運転者監視)機能などを搭載していない。Audiの発表は、「フライングだった」(前述の技術者)と見られるのもしかたない。

 Audiが創業以来かかげる「技術による先進(Vorsprung durch Technik)」。その実現に、是が非でも他社に先駆けて「世界初のレベル3対応」とうたいたかったのだろう。

 仮にA8でレベル2に対応したと発表しても、目新しさはなかった。A8の発表直前に、トヨタ自動車がレクサス「LS」でレベル2の技術の採用を発表していた。ドイツ・ダイムラー(Daimler)や米テスラ(Tesla)なども投入済みだった。

 Audiも、A8の発表前にレベル2対応の「A5」を投入していた。ただし機能面で他社に遅れていたことも、法律が整う道筋が見えない中での“フライング発表”につながった可能性がある。旗艦車種であるA8で、巻き返したかった焦りが透ける。

 『日経Automotive』が2017年11月に発表したレベル2の車両を対象にした「自動運転実車試験」で、A5は110点満点のうち18点にとどまり最下位だった。首位はDaimler「Eクラス」で99点、スウェーデン・ボルボ(Volvo)「V90」とSUBARU「レヴォーグ」が続いた。

 AudiがA8で予定するレベル3の機能は、自動車専用道路の車速60km/h以下に限る自動運転中に、運転者が周囲を監視する必要がないもの(図2)。渋滞中での利用を想定し、車載モニターでテレビ放送を見ることなどを許す。自動運転中の事故について、Audiが「責任を負う」(同社)考えだった。一方でレベル2は「運転支援」であり、事故の責任は運転者にある。

(a)渋滞中に車載モニターでテレビ放送を見られる。
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(b)A8の外観。
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図2 実現しようとしたレベル3
(aの出所:Audi)

 アウディジャパン広報部は、「レベル3の車両を投入する準備が技術的に整ったといち早く発表することで、法律整備の議論を加速させたかった」と語る。同社社長のフィリップ・ノアック(Philipp Noack)氏は「環境が整いしだい、(レベル3の車両を)投入したい」と話した。

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