ソニーがCEATEC復帰のワケ、医療を集中アピール

2019/10/09 05:00
河合 基伸=日経 xTECH/日経デジタルヘルス

 ソニーは2013年を最後に参加を見送っていた展示会「CEATEC」に、6年ぶりの出展を決めた。テーマは「ソニーのテクノロジー×メディカル/ライフサイエンス」。従来と大きく異なり、医療分野に限定して出展する。CEATEC復帰の理由や、ソニーの医療分野への取り組みを、同社 執行役 専務(R&D担当、メディカル事業担当)の勝本徹氏に聞いた。

ソニー 執行役 専務(R&D担当、メディカル事業担当)の勝本徹氏
(撮影:日経 xTECH)
クリックすると拡大した画像が開きます

なぜ6年ぶりにCEATECへの出展を決めたのですか。

 ソニーはテクノロジーの力による社会価値の創出に取り組んでいます。開催テーマを「つながる社会、共創する未来」とする2019年のCEATECは、我々の取り組みと一致します。ソニーとして「安心・安全」などで社会貢献を目指している分野の1つである「医療」について、集中して紹介する良い機会と考えて出展を決めました。医療への取り組みをまとめて紹介するのはソニーとしても初めてです。ソニーのどのような技術が医療に生かされているかを理解してもらえるような展示にしたいです。

ソニーの中で医療事業はどのような位置づけですか

 新規事業として注力している分野の1つです。ビジネスとして立ち上がってきた段階で、まだソニーの屋台骨を支えるところまでは至っていません。小さな事業の集まりであり、急速に売り上げを伸ばすというよりも、長いスパンで社会への貢献を目指しています。着実に成長しているので、社内でもこうした方針が認められています。成長するために巨額の買収をするといったことは考えていません。

 以前のソニーは「命に関わることは慎重に」という方針でした。そのため医療などの事業には慎重だったかもしれません。しかしこうした分野でも「安心・安全」を技術で支える必要があり、ソニーが貢献できることがあるはずです。単独で手掛けるのではなく、医療に詳しい企業と組んで技術を提供する方法であれば、事業化が可能だと考えました。

 例えばオリンパスと2013年に合弁会社「ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ」を設立しました。オリンパスは医師などとのネットワークが豊富で、どの技術を磨けば良いかがよく分かります。単独で事業を進めるのとは比べものにならないと感じています。イメージングの技術がうまく活用でき、ソニーの技術で医療に貢献できるという手応えを感じつつあります。今後も医療の知見のある人や企業と連携していきたいです。

具体的にどのように医療に貢献していきますか。

 ちょうど2019年になって、ソニーの医療事業を支える3本の柱の成果が同時に見えてきました。具体的には(1)ソニー・オリンパスメディカルソリューションズで開発した4Kなどを活用した内視鏡・顕微鏡、(2)2010年に買収した米iCytとソニーの技術を掛け合わせた世界最高性能の細胞分析装置、(3)2016年に買収したベルギーeSATURNUSと実現した外科イメージングソリューション「NUCLeUS」(関連記事)などです。いずれも医療に知見のあるパートナーと組んで、イメージングなどのソニーの技術を応用したものです。

(撮影:日経 xTECH)
クリックすると拡大した画像が開きます

 各事業がバラバラに見えるかもしれませんが、手術で治療する、手術せずに治療する、病気を予防するという医療分野の時代の流れと、イメージングの技術はつながっているのです。

 例えばがんを治す手段として、外科手術の場合は可視光の4Kや3Dの映像で「内臓」を映し出します。さらに赤外線や特殊な光で、がんや血管などを見えるようにもできます。手術以外の治療ができるように「組織」を見る際も、イメージングとしては同じような技術を活用できます。次の段階としては「細胞」、さらに次は「遺伝子」を見るといった流れがあります。

 我々が手掛ける内視鏡などは手術で治療するためのものであり、細胞分析装置などは手術以外の方法で治療するためのものです。治す主体は同じで、やり方が異なるだけです。いずれもソニーのイメージングの技術が活用されており、「つながってきたな」と感じています。遺伝子などの分野にも我々は貢献できると考えています。知見のあるプレーヤーと組んで、つなげていきたいです。研究開発もそうした点を考慮して、「次はここへ行こう」と戦略を立てています。

2019年9月に開催した技術説明会「Sony Technology Day」で、精密な動作が可能な「精密バイラテラル制御システム技術」を紹介していました(関連記事)。手の動きを1/10に縮小し、力を10倍にして返すもので、手術支援ロボットにも応用できそうです。

 可能性としては想定に入れていますが、具体的に何かを狙って取り組んでいる訳ではありません。その前提で話をします。3次元の現実社会を正確に把握してデータ化したり、データ化したものを現実社会に戻したりする応用先の1つにロボティクスがあると考えています。正確な位置情報や構造などが分かれば、ミクロンオーダーで動きを制御できるマニピュレーターが開発できます。

 こうした技術を手術に当てはめると、体内の3次元マップが正確でリアルタイムに分かっていれば、それに向かってロボットを動かすと、正確で安全な手術ができるでしょう。我々の開発しているのは、細かな動きができるだけでなく、そこからのフィードバックを人が感じられる点も特徴です。

(撮影:日経 xTECH)
クリックすると拡大した画像が開きます

「精密バイラテラル制御システム技術」は、アームの先端にかかる力を精緻に検出してフィードバックする機能も備えています。ただしベテランの医師を中心に「手術支援ロボットにフィードバック機能は不要だ」という声もあります。

 確かにそうした声もあるでしょう。しかしフィードバックがなければ、視野の外にある場所に誤って触れる可能性があります。何かしらのインタラクションが必要だと考えています。我々の技術は見ている物と、動いている物の間に、時間差がほとんどありません。時間差がある状態でフィードバックを戻すと、邪魔に感じるのです。自分の手でつかんでいるようなリアルタイム性があれば、フィードバックは絶対に有効だと考えています。

 4Kや3Dに対応した顕微鏡などは、イメージセンサーで撮影してからモニターに映るまで数十m秒に収めないといけません。緻密に遅延の計算をして、目標の数値に抑え込む。100m秒も遅れたら手術にならないのです。映像の遅延については放送で培ったノウハウを活用しています。フィードバックに関しても、ゲームの分野は医療と同じくらいシビアです。そうした事業で培った知見が我々にはあります。

この先は日経 xTECH有料会員の登録が必要です。